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ウチ……バカだ……

ノートPCを開いたまま、ウチは長いこと、デスクの上に突っ伏していた。
ディスプレイには、ウチが初めて、日本語で書いて送信したメールの、Bcc。

文章は、挨拶もなしに、一行。

『正一、好きだ。好きだ好きだ好きだ。』

これだけ。

ウチのこと、天才とか言った奴、誰だ。
……ああ、ウチも自分でそう言ってたんだっけ。

でもウチ、バカ。
ザ・ジャパニーズ・豆腐に頭ぶつけて氏ねばいいのに。

別れ際に、やっと正一からメアド教えて貰ったのに。
正一は、ほっぺた赤くして俯きながら、「メールは英語でして欲しい」って言った。ウチは、是非とも日本語でメール交換したかったんだけど。

だって、ハイテクの国・日本はロボット工学が進んでる、ウチの憧れの国。
だから、独学で勉強したけど、やっぱりリアルの日本語に接してみたかったから。
才能的にはウチの憧れで、全体的にはウチのハートにジャストミートにヒトメボレしてしまった、正一の国の言葉なのなら、尚更。

でも、正一もウチと半分は同じ事を考えていたみたいで、ウチがイギリス生まれだから、リアルな英語の触れてみたい、そう思ったらしくて。

「英語は、世界中で通用する言語だから、学校で勉強するような文学や論文向けじゃなくて、口語表現の英語も勉強したいんだ。だから、スパナが僕の下手くそな英語でも、メール交換してくれるって、言うのなら……」

……正一の英語って、だいぶ流暢で綺麗だと思うけど?
それでも、イギリス生まれなウチを相手に英語の勉強したいとか、正一はどこまでも真面目で努力家だ。

でもウチ、本当は、日本語の勉強もしたかったけど、二の次だったんだ。
日本とイタリアじゃ、あんまり離れすぎてて。次の国際ロボット大会まで待つなんて、ウチあんまり切なくて。

同じイタリアのチームメイトからは、あんな小学生みたいな東洋人のどこがいいんだ?って言われたけど、ウチは本当に、正一を好きになったんだ。

緊張するとお腹痛くなるって、無理して笑顔を作ろうとする、デリケートなヤマトナデシコ。
なのに、鮮やかな采配は、日本チームの男が全員霞む感じに、サムライガール。

正一は、突然変異だから好きじゃない、そう不機嫌に言ってそっぽを向いた神秘的な緑の瞳も。ウチの仲間には不評だった眼鏡も。鼻ぺちゃも、ぽってり唇も、全部キュートで可愛い。本気でそう思ったんだ。

このトキメキは、絶対、恋。めっちゃ恋。

でも、ウチ、ヤマトナデシコ・正一を好きになったのに、口説くのはイタリア流にしてしまった。
つまり、本当はもっと長いけど、要約するとこんな感じだ。

「ヤマトナデシコでサムライガールの正一。ウチ、こんなにステキgr8で可愛い女の子に出会ったのは、生まれて初めてだ。神秘的なグリーン・アイズは、エメラルドよりもジェイド(注1)よりも綺麗な宝石。ちっちゃくて細っこくて、ウチが支えてあげなきゃ折れてしまいそうだ。ってゆーかウチ、是非とも支えたいんだけど。ウチ、一発でハートを撃ち抜かれる感じに、正一にFall in Love。ウチはもう、正一の居ない世界でなんか生きていけない。だからウチの、世界で一番Beautifulな花嫁さんになって欲しい。アイシテルから、Say yes.」

……ウチ、ひとことも嘘言ってないんだけど。
公衆の面前で、ヤマトナデシコの肩を抱いて口説くとか、日本では、おとなしい正一がブチ切れるほど、無礼な振る舞いだったらしい。

「よ…よくも!初対面の人間に対して、心にもない嘘を、ペラペラと言ってくれるね!!ジョークにしては品も知性も足りない!しねば(ry」

ウチ、本当に死にそうな感じに落ち込んで、チームメイトに慰められた……

でも、それって、大会前の親善パーティーでのことだったから。
大会本番で、正一はちゃんとイタリアチームのことも冷静にチェックしててくれてた。

もう一度、ウチが無礼を謝って、でも嘘でもジョークでもなくて本気なんだって、再チャレンジするつもりで声をかけようとした時、正一の方から、

「ああ、イタリアの軽薄男。でも、君のチームのロボットは、素晴らしいよ。多分、悔しいけど日本チームのものよりも優れていると思う。……でも、僕は負けるつもりは無いし、勝算もある。決勝で首を洗って待っていろ」

……って、サムライな言葉をもらった……



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注1:ジェイド=翡翠(ヒスイ)。

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