01

「どーして…!アンタばっかりが、超モテる訳!?」

……どうしてと、言われても。
正一は、休講時間に同性の友人と群れて、学内のレストランでコーヒーゼリーを突っつきながら思った。

「えっと…あの。モテるって、何人もの男のひとに囲まれてるとか、次々に寄って来ちゃうとか、そういうのを言うんじゃない、かな…?」
そういう意味では、正一はモテるとは真逆な感じに、大抵の男には、眼中にさえ入らないタイプだという自覚があるのだが。

「ふたりも居れば、十分すぎるでしょーーー!!あんだけ、いい男をふたりも独り占めしてればっ!」
独り占めしていない、などと言えば余計にこじれそうだと、正一は言葉を探した。

「あの…Boyfriends、じゃないよ?本当に、男性の、友達……なんだけど」

アメリカで、Loverと言えばむしろ愛人。Boyfriend(or Girlfriend)で恋人。大人でも、結構お年を召していてもボーイもしくはガールでOKらしい。

「それは、白蘭とスパナが仲良しだからじゃない?どっちもショーイチが好きなんだけど、男の友情で踏みとどまってるのにアタシ10ドル」
「賭けにならないわね。私は20ドル賭けてもいいけど」
「そう?じゃあ、私は望みを託して、スパナはジャスト・フレンドだけど、白蘭だけショーイチを獲物にする気満々で10ドル」
「ちょっとー!!僕、獲物!?獲物って何???」
「うーん。私は逆パターンに20ドル!スパナはショーイチしか眼中に入っていないけど、白蘭はショーイチを弄り甲斐のあるマスコット感覚で可愛がってる感じ」
「確かに僕は弄られキャラだけど!あまり本当の事を言わないでくれないかいっ!?僕だってそれなりに凹むんだよ!」

女友達の間で、意見が割れるのには、それなりに理由が有る……と正一は思っている。

とりあえず、白蘭にしてもスパナにしても、正一を特別扱いにしているのは、いくら正一が奥手で鈍くても分かる。
嫉妬と羨望の視線を女子学生から浴びまくりというか、突き刺さりまくりなのも、それは痛いほどよく分かる。

白蘭は、正一にどういう訳か躾の悪い犬が飛び付いてくるみたいに「懐いている」ように思えた。何故、自分が気に入られてしまったのか、正一は未だ謎を解けずにいるのだが。
そういう時、甘えんぼさんなのかな?と正一は思うのだが、やはり大人の男なのも白蘭だ。

確かに、正一は白蘭のマスコット的な、或いはかなり好意的に解釈すれば妹のような…存在だ。
たとえ、白蘭の掌の上で、転がされてからかって遊ばれるばかりだとしてもだ。

そして、シャイで生真面目な正一が、いちいち真に受けたり真っ赤になったりするのを、白蘭は面白がっている。

でも、意地悪ではないのだ。それが、あのひとの親愛の情の表し方なのだし、<可愛がり方>なんだ……と、正一は理解していた。
だから、いちいち赤面する自分を恥ずかしいとは思っても、全く白蘭が構ってくれなくなったら、正一はきっと寂しくなってしまうのだろう。

……とは、あまり、考えないようにしている事だった。
マスコットにしろ妹にしろ、恋愛の対象になることはないのだから。

そして、スパナ。
こちらは、白蘭ほど複雑でも変化球でもない。

アンニュイな眼差しがステキ♪とか女子学生には言われているが、そういう時のスパナは、単にぼーっとしているか、逆に何かに集中している時だ。
そんなスパナは、静かな見かけから受ける印象よりもずっとポジティブで、バイタリティのある青年だ。

そして、興味関心の幅広い白蘭とは違って、スパナは興味のある物事も人間もハッキリしている。
そういう訳で、高校時代に国際ロボットコンテストで3年連続決勝戦をやった正一に対しては、スパナはよきライバル的な友情を示してくれている。

スパナは、話しかけてみれば案外誰にでも温和にフレンドリーなのだが、一見表情に乏しくて、取っつきにくい印象を与える。
そして、ロボットに懲りすぎる余りに、アイツの恋人はロボットだと、半ば真顔で言われるほどだ。
だから、スパナが何かと正一、正一、と構いたがるのを見た者は、「アレ?スパナお前、人間の女にも興味あったのか?」と驚くことになる。

(正一。ウチ結局、3年連続正一に勝てなかったけど)
(それでも、ウチは高みを目指したいから)

(正一のこと、一番のライバルだと思っていてもいいか?)

……高校最後のロボット大会が終わった後で。
僕は、告白も出来ずにいるうちに、アレでとどめを刺される感じに振られのも同然だと思う……

「あんまり、勝手なことを言わないでくれるかな。少なくとも、僕はスパナから<一番のライバル>って言われたんだし、僕自身も、真剣にそうあり続けたいと思っているんだ」

いつもはおとなしい正一が、意志の強い光をそのグリーン・アイズに宿して、静かに言った。……ので、皆黙った。
正一は、一見すると、日本人代表らしくかなりあどけなく、中学生くらいの少年(女の子っぽくない。なのに何故モテる??)のように見えるのだが、キレると怖い。

が、正一は、嵐の前の静けさ、というわけでもなかったようで、溜め息交じりに肩をすくめただけだった。
「白蘭サンが、愉快犯なのは今更だろう?あの、ノリノリでアイシテルを連呼する辺り、本気にしないのが正しいはずだ」

ネイティブは、結婚が視野に入っている=家族同様に愛しているレベルでなければ、I love you. などとは軽々しく言わない法則。
軽々しく言うのならば、それはジョークだ。

「正チャ〜ン!みっけー!!」

……噂をすれば、大学祭のミスターコンテストで、ぶっちぎり1位をかっ攫った、女子学生曰く<学内一のイケメンセクシー>が、真っ白な躾の悪い犬みたいに、満面の笑顔で正一に突進してきた。

「捜しちゃったよ〜!正チャンってば、メールしても電話しても出てくれないし〜!!」
「あ、そういえば、さっきの講義の時に電源切ったような。……って白蘭サン、抱き付かない!いちいち感動の再会みたいに抱き付かないで下さいぃぃぃ!!」

白蘭は、学内一のイケメンでセクシーな紫水晶の瞳で、マシマロよりも甘く微笑した。
「僕としては一日千秋ところか、1秒千秋な想いなんだよ正チャン……?まさに、これを感動の再会と呼ばずに、何と呼ぶんだい……?」

どこまで気障な科白だーーー!!と正一も思うのに、白蘭が言えばどんなかっ飛んだ気障でも様になるのは、何故に!?

「愛しているよ正チャン…。次の講義は僕と同じだよね?さあ、迷わずに僕の手を取ってくれるだろう……?情熱的な駆け落ちのように」
「ふ、普通に歩いていけばいいじゃありませんか!!」
「真っ赤になって僕を意識してくれるのも、最高に可愛いね正チャン…。もっと素直になっていいんだよ?」

正一は、ぐらんとした。
白蘭は、親友だ。愉快犯でも親友だ。そう分かっているのに、美形・セクシー・甘、のトリプル攻撃をもろに食らうのは何故なのだろうか???

「びゃ、白蘭サン。次の講義というのなら、そこの彼女たちも同じですからっ!」
正一は、今初めて気付いたように、正一の友人達を、流し目で捉えた。

何で、普通に見ないんだよ!!みんな一撃で悩殺されたじゃないかーーーっ!!(←正一の感想)

「ああ、君たちのことは全員知っているよ。当然に顔だけじゃなくて名前もね。うちは工科大学でむさくるしく男ばっかりだから、女子学生は貴重なお花。そして、正チャンにとっても貴重な同性のオトモダチ♪これからも、正チャンと仲良くしてあげてね」
「そう思うのなら、僕、彼女たちと一緒に行きたいんですけど!!」

正一としては、行動を共にして、あくまでも白蘭もスパナも友人、であることを証明したかった。のだが。

「ダ〜メ。だって、僕たちは3人一緒なのが一番幸せ♪なんだもーん」
「たち、って誰ですかー!勝手に僕を頭数に入れないで下さいよ!!」
「僕とスパナが同意見で複数形なのさ。何も文法的に不備は無いんだよ正チャン?ちなみに、2−1の多数決で、お持ち帰り決定だから〜」
「お、お持ち帰りって何ですか!!…ちょっ?…きゃああああーーー!!」
「ああ、きゃーとか、ヤマトナデシコなのに、いつも頑なにボーイッシュにしている正チャンの口から聞くと、僕は胸がときめくよ……録音してスパナに聴かせてあげたいくらいに」
「な、何でスパナにまで聴かせなきゃならないんですかーーーっ!!」

白蘭は、華奢な正一を軽々とお姫様抱っこすると、正一の友人達に、スマートにウインクを決めた。

「ってゆーわけで、正チャンは頂いていくよ?じゃーね」

おーろーしーてーくーだーさーいーーーー!!!……という正一の悲鳴があっという間に遠ざかって。

漸く、女子学生達は口を開いた。
「イケメンセクシーすぎるわ……白蘭」
「あの破壊力って反則……」
「反則すぎて、もはや兵器だと思うんだけど私……」
「兵器でも、やっぱりショーイチが羨ましいのって、私だけ?」

確かに、入江正一と言えば、高校生国際ロボット大会で、3年連続日本チームを優勝させた中心人物として、有名人ではある。
そして、首席入学したあとも、大学教授と対等に議論出来るほどの真性天才だ。

でも、見かけは幼く中学生みたいで、かといって少女らしい仄かな色香がある訳でもないので、眼鏡も手伝って、垢抜けない男の子みたいな印象。

なのに、圧倒的なスター性を誇る白蘭。そして、静かなる男で白蘭ほど目立つ訳ではないが、それは綺麗な金髪碧眼をもつ、こちらも美形のスパナ。……のふたりは、いつも正一にばかり構いたがるのだし、何だかんだといつも3人一緒なのだ。

結局、謎は謎のままに。
い〜な〜、と女子学生達は溜め息を吐いた。

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