01

キャバッローネファミリーは、抗争の中で、分断されていた。

……違う、そう見せかけて、ディーノは最後まで一番危険な場所に身を投じたまま、部下をひとりでも多く生きて帰らせようとしたのだった。

「お前達も、行けよ」

ディーノは深手を負いながら、それでもまだ、愛用の鞭を手に立っていた。
本当はもう、立っているのがやっとだった。自分が同行すると、今ならどうにか逃げられるはずの部下の、足手纏いになる。

「そりゃあ無理だぜボス。アンタは自覚ねえみたいだが、<守るべき者>が居ないと、今でもドジッ子ディーノなんだからよ」

笑いながら、ロマーリオが背中合わせにディーノの背後に立ったのは、そうしてさりげなく、いつ倒れてもおかしくないディーノの身体を支える為だった。

(……何だ、ロマ、知ってたのかよ)
(おう、アンタは、部下が傍に付いてないと、途端に頼りなくなるだろ。オレが守られ役になってやっから、安心しな)
(そうじゃねえよ、ロマ。……オレはもう、逃げられねえんだって、気付いてんだろ……?)

背中合わせのまま、ふたりだけに聞こえるように交わされた会話。

(……行けよ、ロマ。まだ生きられるのに、死ぬことはねーんだ)
(無理だぜボス。オレの方が年だ。1秒でもいいから、順番は守ろうぜ?……それに)

ロマーリオは、がちゃりと重いマシンガンを構え直すと、連射して敵をまとめて屠った。

(ボス、オレにとっちゃあアンタの居ねえこの世なんざ、日本酒が飲めねえジャッポーネの花見みたいなもんだ。用はねえ)
(……そうかよ)

暗に、ロマーリオは一緒に死んでやると、そうディーノに言ったのだった。ディーノは意識が遠のいて揺らぐ視界の中で、じゃー、酒はあの世でやるか、と笑った。

「オレはボスと残るぜ!置いて行くなんざ、冗談じゃねえ」
残された部下はロマーリオも含めて5名。口々に同じ事を言う。

だが、キャバッローネには、ディーノの跡を継ぐ、その血を継ぐ者が居ない。
キャバッローネが、規模を縮小してでも、せめて街の自警団としての役割を担っていくには、ひとりでも多く、幹部クラスの部下を生きて返さなければならなかった。

「安心しろよ。こちとら、置いて行かれる気なんざねえ。……必ず生きて合流する。オレが一度でも、この約束を破ったことがあったか?」

ディーノは、さいごのさいごで、なんて大見得だと思いながらドン・キャバッローネの不敵な笑みで部下に告げた。

「ボスの命令には従うもんだぜ?オレを信じろ」

信じろと、さいごに言って、裏切る自分を、許して欲しいだなんて思わない。
ただ、生き延びて欲しい、その為には、ボスとして何だってしてやる。

「ボスの言うとおりだぜ。キャバッローネのツートップが、そう簡単にやられるかよ。お前らは、先に言って、退路を開きな」

まだ、部下達は躊躇っている。ロマーリオの背中に、ディーノの体重が徐々に重く寄り掛かる。……もう、ディーノが限界だ。

「行けってんのが……信じろってんのが、分かんねえのか!迷ってる時間なんざ、もう1秒だってねえんだよ!!」

ロマーリオのマシンガンが火を噴いて、部下達の足元の土を激しく穿った。
当然、これは単なる叱咤であり、当てる意図などないが、切迫した表情で部下は後退った。

「おう、いい子だから、そのまま先に行ってな」

部下達は、お互いに顔を見合わせると、決心したように、ディーノとロマーリオに再会を強く念を押して、……生きて帰れる保証など無い、命がけの退路へと、走り去っていった。

部下の後ろ姿が硝煙の向こうに消えて、ずるりとディーノの身体は崩れ落ちた。
だが、そのまま地に倒れ伏すことはなく、しっかりとロマーリオの腕の中に、抱き締められた。


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