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草壁がずっと、長い髪を結ぶのに使っていた、母親の唯一の形見。

元々、旧い着物の生地を使った手作りなのだから、いつかこうなる日が来るのは分かっていた。
もうだいぶ布が擦り切れていて、これ以上キツく髪をくくるのに使っていては、完全に破れてしまうだろう。

草壁は、引き出しに大事に紐を仕舞って、台所にある輪ゴムで髪をくくってみた。

……何でこんなに痛いんだ!?痛すぎるまじか!!

おまけに、解くときに髪が絡みまくって、抜けたり切れたりブチブチいった。
草壁は腰まである長い黒髪を、まるで貞子だと思いながら、玄関に向かった。

仕方無い、通り道のコンビニでヘアゴムを買おう。……長ランでヘアゴム買うってアリなのか?
アリかもしれない。確か、2年の獄寺とかいう、委員長と仲が良いんだか悪いんだかイマイチ不明な喫煙少年が、たまに髪をくくったりヘアピンで留めているような気がする。

……男のくせに、オレより背が低い(しかしチビではなくむしろ高め?オレが大女なだけだ)上に華奢で、おまけにオレよりかなり美人な気がするが。

深く考えると余計にブルーになりそうだったので、草壁はポケットから財布を出した。

……所持金30円。
何コレ貧乏すぎる(遠い目)

ちょうど、草壁の父親が起きてきた。どーしよーもないチンピラだが、煙草を買う金くらいはいつも持ち歩いているんだろうだから、500円くらい小遣いくれたっていいと思う。

「おい、お前……」
何だか寝ぼけてるっぽい半目で、じ〜〜〜っと娘(草壁)を見る。

「ああ、髪かよ。貞子とか言うなよ?んで、ヘアゴム買わなきゃなんないから、小遣い」
くれ、と言いかけた所で、何故かぶわっと、草壁父の目に涙が溢れた。……な、ななな何なんだ!?

「も…戻ってきてくれたのか!@子〜〜〜っ!!!」<がばっ>

ぎゃああああ!お袋に間違えられたーーー!!!

「抱き付くなかなり気持ち悪い!オレは哲矢だっつーの!!大体、戻ってくる訳ねーだろーがMA(まるで)DA(ダメな)O(オヤジ)!!!」

気が付いたら、草壁の上段突きが見事に決まっていて、草壁父は再び安らかな眠りに就いた。(←つまり気絶した)

……しまった、小遣い貰いそこなった。

やっぱり、委員長・雲雀に何と言われようとも、バッサリ髪を切るんだった……と、草壁は今更な後悔に陥った。

(ねえ、君の髪、僕以外の男に、絶対に触らせないで)
(泣いてしまう、女の子らしい、君が好き)

うあああああ!!!

草壁は、叫び出しそうになるのを死ぬ気で抑え込む代わりに、何だかやたら顔が熱を持つのを感じながら、俯き加減に、しかし長いストライドでずんずん歩いた。

委員長もかなり罪なひとだ、と草壁は思う。
獄寺隼人が西洋美人代表だとすると、雲雀もまた、男なのにぶっちぎりで並盛一の東洋美人だ。

大概の美女も美少女も敗北するレベルの美人な男から、「女の子らしい」だの、「綺麗な髪だね」だの言われる方の身になって欲しい。
真に受けるだけ、こっちが道化になるのは必至。

何故なら、素の草壁よりも、女装した雲雀の方が、絶対に女らしく見えるだろうし、怖いくらいに美しいのに決まっているからだ。
日本人の中でも珍しいほどの雲雀の漆黒の髪だって、とても綺麗で。


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