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(……正一。どうして、日本人の正一が、ミルフィオーレの指揮官なんて、しているんだ……?)

それは、高校生国際ロボット大会以来の、久しぶりの再会だった。

スパナは、正一を見つめて、茫然とそう言ったのだった。
正一は、身を切るような思いで、冷たく応えた。

(君が、それを知る必要は無い、……スパナ)

正一は背を向け、振り返らなかった。

巻き込みたくなかったから。大切な友情を、自ら踏みにじった。

"味方内の敵"であるブラックスペルに正一の友人がいて、その友情が今でも続いていると知れば、当然に白蘭は興味を持つのに決まっている。
白蘭の副官としてスパイ活動をするなどという命知らずな賭けは、正一単身だから何とか可能であったのだ。

どれだけ正一が胃痛を起こそうが、それだけで済む。
死ぬ時だって、自分ひとりで死ねばいい。

(もし、<裏切り>が白蘭サンにバレたら)
(君は、僕の最大の弱みになり、白蘭サンの人質になる……スパナ)

幸いにして、スパナは純然たる技術屋で、戦闘要員でもなければ、正一のように戦略に関わる幕僚でもない。

(僕との友情さえ、君の中から消えてしまえば)
(僕と君が、単なる上官と部下になってしまえば)

僕がこの賭けに負けて死ぬ時が来ても、君の命だけは救えるんだ。スパナ……

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出来るなら、もう一生、会わずにおきたかった。
でも、何処をどう見渡しても、スパナ以上の適任者は居ない。

正一は、重苦しい溜め息を吐いた。此処では、チェルベッロが邪魔だ。

回線を繋ぐと、モニター画面に、癖のある金の髪と、飄々とした青い瞳が現れた。
「君に頼みたい任務がある。今から君の研究室に行く」
『……ん、わかった。待ってる』

表面上、何事も無い会話で、海の色の瞳からは、友人としての親しみも、上官への敬意も、<敵>に対する憎しみも……何も感じられなかった。

正一は平静を装いつつ、お腹が痛くてうずくまりたい心境に陥ったが、チェルベッロも特に不審に思っている様子はなかった。
ただ、自分の研究室を出る時に質問されただけだ。

「入江様、何の任務です?」
「……モスカさ。彼が適任だ」

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