ヤトオカ ver.1.5
金曜日の朝、私はいつもどおりに7時半に教室に到着した。
スチームは8時をすぎないと使えないから、コートを脱がずに読みかけの本を通学用のリュックから取り出した。冬休みが終わって変わったことといえば、リュックにつけたヘビのマスコットと……スカートの長さ。
スチームが使えないだけじゃなくて、寒い原因はそこにもあるのだけど、なんとなくそのままになっている。

「満丘は脚キレイなんだからもう少し短い方がいいって!」

体育の授業から戻ってくるとクラスメイトのでんちゃんが、私の裾上げ済みのスカートを差し出してきた。体育の授業をサボって教室で1人黙々と作業をしているでんちゃんの姿を想像するとなんだかおかしくて、私はそのまま受け取った。
短い丈のスカートは、「みちゅおかかわいい」と他のクラスメイトからも好評で、直す機会を逸してしまったというのもある。
かわいいと言われるのは、やっぱり悪い気はしないし。
本を開こうとした時に前髪が邪魔なことに気づき、星のついたヘアピンを取り出した。
寒さで手がかじかんでいたからか上手く前髪を止められずに床に落としてしまう。
冷たい床の上に膝をついて探していると、後方でガタタタッと大きな音がした。
振り返ると、顔を真っ赤にして口元を押さえている弥人くんが、なんとも言えない顔で私を見ていた。

「……? おはよう」

ドアにもたれ掛かるようにして立っていた弥人くんは、

「満丘さん、スタンダップ!!」

うつむいたまま大きな声でそう言った。

「え、あ、は」

私は訳の分からぬままその場に立ち上がる。
弥人くんはしゃがんで足元に落ちていた私のヘアピンを拾い上げると、足早に私のところまでやってきた。
手のひらにヘアピンが落とされて、それから弥人くんは、困ったように笑って、

「スカート……膝の上くらいなのが、かわいいと思うな」

となんとも言いにくそうに言ったのだった。
なんだかよくわからなかったけれど、弥人くんのその表情がなんだかかわいらしくて、私はでんちゃんにごめんねとありがとうを伝えると、土日に一生懸命スカートの丈を戻したのだった。


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20130115up

ベッタベタですが。
何を見たのだヤトくん(笑)
Twitter内で増岡さんとおでんさんとのやり取りからできたお話です。


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