ヴェリーヌ





柳って、ヴェリーヌみたい

目の前に置かれたそれを見て、以前優花にそう言われた時のことを思い出す


「…、作ったのか?」

『うん、作ってみた』

「先輩、なんスかこれ?スゲー美味そうっスけど!!」


淡々と言ってのける彼女に、興味を持ったらしい赤也が目の前のものについて尋ねる


「おや、これはヴェリーヌですね」

「うおーマジだ!お前こんなのも作れんのかよ」

『凄いでしょー、もっと褒めて』


俺に向けられた言葉ではなかったが、優花の頭を撫でてやると、えへへー、とはにかむものだから愛しくてたまらない


「…ヴェリーヌとは、フランス語のverreとterrineを掛け合わせて出来た造語のことだ」

「ヴェール…と、テリーヌ?なんスかそれ?」

「ヴェールはグラスという意味だ。…要するに、グラスに入ったスイーツというところだな」

『ミルフィーユみたいに何層にもなってる、フランスから来たスイーツなのです』


俺と優花で一通り説明すると、赤也は納得したようで、ふーん、とりあえず美味そうっスね!といかにも食べたいとアピールしている


『だめよー赤也、これは柳のだから』

「ちぇー」

「一つしか作らなかったのか?」


いつもなら部員分、なくてもレギュラー分は差し入れを持ってきているが、今日は一つしかないらしい

疑問に思っていると意外な言葉が返ってきた


『あーやっぱ忘れてるでしょ』

「今日は…ぅおっ、ちょ何するんスか、先輩!?」

「今はおまんが言う番じゃないぜよ」

「そうだな、赤也の出番じゃねえ」


今日は…6月4日、か

赤也が漏らした言葉に全てを汲み取ったが、ここは知らないフリをするのが妥当だろうか


『いいよ、仁王、ブン太。もう柳気付いちゃったし』

「すんません、優花先輩…」

『別に赤也の性じゃないよー?…じゃあ、柳。はぴば!ってことで…』


おめでとう、食べてください
と差し入れのときには言わない言葉を添えて、ヴェリーヌをまた前に出された


『それは柳だからね?』

「ああ、…でも俺からすればお前の方がヴェリーヌだが?」


俺がそう言えば、優花はほんのりと頬を赤くした


「先輩方、どういう意味っスか?」


頭にはてなを浮かべる赤也に苦笑する


以前、ヴェリーヌみたいだ、と言われたとき、俺は優花に何故かと聞いた

『だって、透明な容器にいろんな層があるんだよ?まんま柳じゃん』

理由を言われても俺とは掛け離れている気がしたが、よく考えればそれは俺から見た優花そのものだった


曇りのない容器にいろいろな層、具体的に例えることは出来ないが、なんとなくそう感じた



『美味しい?』

「ああ、俺の好みだな」


ありがとう、と微笑むと彼女もまた俺の好きな顔で微笑んだ

ヴェリーヌ
(透明な彼女と、いろいろな表情)



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一日遅れでごめんなさい

ローソ○のスイーツランキングで出てたヴェリーヌ
次の日にはネタにしているという←

柳さん好きです
06/04 柳HAPPY BIRTHDAY!




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