ネックレスの謎
ある日の帰り道
私は初対面のときからずっと気になっていたことを、部活がなくて喜び気味の裕次郎に聞いてみた
『ねー裕次郎、裕次郎のネックレスって元カノかなんかの?』
裕次郎に女の子がいたー、
とかいう話は一度も聞いたことなかったから、尚更気になっていたのだ
「ん?これのことか?ちげーよ、父ちゃんの」
あ、そうなんだ
よかったー…
もし元カノのとかだったらどーしよー…
とか思ってたんだけど
「もしかして、妬いてた?そりゃ、残念。大体、わんにはやーが初めての彼女だっつーの」
『うっわぁー…、なんか嬉しい』
すっごい棘がある言い方だけど、裕次郎の性格くらいわかる
これは照れくさくて素直じゃないだけだ、きっと
…だってほら、にふぇーでびる、って言っただけで顔真っ赤になってる
「か、かしまさんッ!!やーがこんなこと聞いてこなきゃ…」
『だって本当に妬いてたんだよ、しょうがないの』
まぁ、裕次郎は元カノを引きずるような男じゃないって、
信じてたから聞けたことなんだけれども
あれ、でも何で…
「何で、お父さんのなのに裕次郎がつけてるの?」
お父さんがお母さんに渡すー、とかなら分かるけど…
何故に裕次郎に渡したんだろう、
っつかどんな親子愛
そして父から息子ってなに
「あぁ、わんの父ちゃん、漁師で殆んど帰って来ないんどー。だから、『家の事はお前にまかせた』って言って預けていったんさぁ」
『(父息子愛じゃなかった…)じゃあ、裕次郎は家族を守んなきゃならないんだ?』
「ま、そういうこと」
『大変だね、裕次郎』
「そんなことねぇーよ。
わんには優花、やーもいるしな」
…こいつはどーしてこーも、天然なんだろうか
うちなーの海ぐらいに天然だ
こればかりはどうしようもない………
でも、それが嬉しくてしょうがない
…やっぱ、恥ずかしさの方が断ッ然上だけどね!
「優花、どーした?顔、見せろ」
『な、なんでもないッ!から、気にしないで!』
きっと、俯いた私の顔は裕次郎からは見えない
…見えなくて助かった
今、私の顔は茹蛸みたいに真っ赤だろうから
「なんでもないんなら、見せろ」
『いや!!』
「いーから見せろ、って!!」『絶対、いや!!』
私が断固拒否していると、裕次郎は諦めた様に見えた
…これで、無事に逃げ切ったのか?
いや、逃げてはないんだけど
「そうか、そんなに見せたくないんなら……作戦に出るまでやっしー!!」
『は…?』
突然の言葉に私は一瞬、ポカン、としてしまった
それが今回の敗因だった
裕次郎は後ろからそっと、でも強く私を、抱き締めてきた
そんな現状にさらに顔が赤くなる
見られたくないのに…何してんのこいつ!
『ちょっ、裕次郎!!』
「やめてやんねー」
そしてコイツは卑怯だ
私が耳を弱いのを知ってか、知らずか
どちらにせよ、耳元で喋りだしやがった
「優花…わんのこと嫌いになった?」
『そ、そんなことなッ!!』
「ならなんで、顔、見せてくんねーの?」
『だって、裕次郎が恥ずかしいこと普通に言うから…』
と、言ったところで、裕次郎の指が私を振り向かせてしまった
「顔が赤くてわんに見せられないって訳ね」
突然のことばっかで反応がついていかない
ってゆーか、結局、見られたし………
『ゆ、ゆーじろっ、近い‥』
「優花が、顔見せてくんなかった罰さー」
裕次郎はこの状況を絶対に楽しんでる
私が恥ずかしがってるのを見て、面白そうにしてるの見ればよく分かる
私なんて、心臓バクバクで胸がはち切れそうだって言うのに
ま、そういうところも含めて裕次郎を好きになったんだけど
『ねぇ…ゆーじろー。いつまでこの状況なわけ‥?』
「この状況がいやなら変えてやってもいーけど?」
『ホントにっ!?』
「おう。男に二言はねぇ」
裕次郎がニヤニヤ笑ってるん…?ニヤニヤ、って何か嫌な予感が…
「んじゃ、こーゆーことで」
『?………っ!?裕次郎っ、ちょ、タンマ!!‥っ』
耳に入るは、ちゅ、と言うリップ音
やられた
キスされた
別に、初めてな訳じゃないけど、コイツとのキスは無性に恥ずかしい
…好きな人だからだと思うけどね
…でも、ちょっと待て
なんか、…長過ぎる気がするのは私だけ?
『ッ!?…んぁ、ふ‥んッ///』
待て待て待て、舌入れてきやがったよ!
ディープキスは初めてなんだけどこんなことされるなんて、聞いてない
でも、何気に裕次郎はキスが上手くて、私はその場にへたり込みそうになった
でも、目の前にいる裕次郎がしっかりと私の体を支えてたから平気だったんだけど
……苦しくなってきた
辛くなってきた私は、力の入らない手で何とか裕次郎の胸を叩く
叩いていると、苦しいという意思表示が分かったのか、唇は離れていった
…ディープキスだったため、銀糸が引いている
……うわっ、めっちゃくちゃいやらしいんですけど
『っは、ぁ…ゆ、じろっ!!ディープなんて聞いてないよっ!?』
ってか、キスするってのも聞いてない!!
私がそういうと、裕次郎は苦笑を漏らした
乙女の初ディープを苦笑で済ますなよ!
「わりぃ、わりぃ。
つい、な。やーの赤い顔見てたら理性なくなってた」
『なっ!?』
「そんだけそそられたんだって。やーの顔、すげー可愛いしな」
…なんか珍しく裕次郎が素直だから、許さずにいられない
あーもう、私ホントにこいつに弱すぎる
『……裕次郎の馬鹿。変態』
「なんとでも言え。今回はわんが悪いからな」『うわー、裕次郎が自分が悪いってこと認めた!!』
「なんで、『これはすごい!!』みたいなこと言ってんだよ!!」
『だって、裕次郎滅多に自分が悪いって認めないじゃない』
「あー、そうか。折角許してやろうと思ったのになー」
やっちゃった、墓穴掘った!
後ちょっと頑張ってれば、何とかなったのに
『ちょ、ちょっと!!』
「優花はそんなに苛めて欲しいのか?それとも……お仕置きして欲しい?」
ブチッ
あ、ダメだ
もう持たないよ、私
だって何か切れた音聞こえたもん
『…こんの、むっつり裕次郎がぁー!!』
「げ…、優花様降臨‥?」
あいひゃー、…やべっ!
と言って、裕次郎は走り出す
実は、「学年一位(女子)の足の速さを誇る」という私から逃げ切れると思っているのか!!
「いくら学年一位のやーでもな、うちなーにいる限り、わんは優花には負けねーよっ!!」
『分からないでしょ、そんなこと!!』「無理だって、大体、砂浜で走るのやーは苦手だろーが」
『へ?・・うわっ!!』
そーいや、ここ海だった
砂で走るのが嫌いな私は、豪快に転ぶ…はずだった、んだけど
あれ、痛くない…?
「あっぶねー」
『ゆ、裕次郎!!…どーして?』
ついさっきまで5mくらい距離がある場所にいたはずの裕次郎が、私の下敷きになって庇ってくれていた
「優花が転びそうになったから、縮地方でギリギリ…」
『ご、ごめん…私のせいで‥』
「いや、わんももっとかっこよく支えるつもりだったんだけど、失敗して下敷きになっちまった。…ごめんな、かっこつかなくて」
『いいよ、別に。裕次郎は私を助けて下敷きになったんでしょ?…むしろかっこよかったよ?………でも、どっか痛くない?』
「別に、やーが無事なら…それでいい」
そう言って、裕次郎は私を所謂お姫様抱っこで抱えて、立ち上がった
「このままわんの家、行くか?」
『!!・・うんっ』
* * *
『ってゆーか、海であんなことしてたんだねー。恥ずかしいなぁ』
「やー、今さらだな。それ言うの」
『気付いてなかったし、海だってこと。
誰かに見られてないかなー…』
「ん?・・凛と木手が見てたから見せ付けてやった」
『……ようするに私たちはバカップル晒してのね‥』
ネックレスの謎
(甲斐くん、外でイチャつくのはやめてもらえませんか)(そうやっしー、っつかズリーぜ、裕次郎)(わかったから優花返せ、お前ら!!)
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はい、古株です
昔作ったやつ修正したんですがグダグダですんまそん…
そして冬に夏物すんまそん
因みに、にふぇーでびるはありがとう
かしまさん、はやかましい、とかうるさいという意味です
甲斐くん、好きです
早くDSでエスカレーター逆走シーンが見たいです
とりあえず甲斐くんは
健全な男子中学生だといい
※ネックレスは40.5巻ネタです
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