すぐ大人になるから待ってて
澄み渡った空を見上げ、私は冬の空気で冷えた手を擦り合わせた。
駅前広場に置かれたモミの木には装飾が施され、燦然と輝いている。
辺りを見渡せば恋人たちで溢れ返っていて、一人でいるということに虚しさを感じる。…早く来ないかな、ほんと。
『―あ、先輩?…どこにいるんですか?今、』
「堪忍な、電車遅れてしもて…ちょうど駅着いたわ」
『あ、私、駅前広場のツリーの前にっ』
知っとるよ、耳元で聞こえた声に跳び上がる。…携帯を宛ててるのとは逆の耳、なんだけど?
『っう、わ、…先輩!?』
「そや、待たせたな」
『…あ、いえ、っていうかっ…』
「遅うなってほんま堪忍な?…怒ってる?」
『…耳元で言われた衝撃で怒りも吹き飛びましたよ、もう』
「せやった。耳弱いもんな、自分」
クスクスと笑う白石先輩は、ヒールを履いた私より頭一つ分大きい。
せめてヒール履かずに頭一つ分だったらよかったのに。…これじゃよくて兄妹にしか見られないんだけど。
ただでさえ大人びた顔をしている先輩に、童顔な私とか親子にすら間違えられかねないんじゃないか?
「なあ、…嫌やったか?今日」
『そんな、楽しみでしょうがなかったのに!』
「いや、それならええんやけど、ごっつう眉間に皺寄っとったから」
『…あー、そんな顔してました?』
「おん、めっちゃ難しそうな顔しててん」
ごめんなさい、と言えばくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
それだけで心が満たされるのは…やっぱり私はこの人が好きなんだなあ。
『…先輩は大人ですねー』
「歳は一コしか違わんけどな」
『…む、私が子供っぽいから釣り合わないんじゃないかって話ですよ』
「誰かに言われたん?」
『別に、言われてませんけど』
「俺んこと好きちゃうん?」
『っな、す、好き、…です、けど』
「俺も好きや。なら、問題あらへんやん」
こうやってナチュラルに言葉に出来ちゃったり、気遣いが上手かったり。
…そういうところで差を感じてしまう私は、やっぱりまだまだ子供だと思う。
「…だいたいなあ、他のやつにどう思われようと関係ないやろ」
『…でも、悔しいですもん』
…白石先輩を好きな人は校内でも結構いたりして。
その人達に呼び出される度、「アンタみたいなガキ」とか「釣り合わないのよ」とかいっぱい言われてきた私としては、悔しくてしょうがなかった。
先輩が選んでくれたのは私なのに、そう思っても自信が持てない自分に対して。
「そやなあ…、俺的にはもう十分なくらい大人に見えんのやけど…」
『…?』
「待っとるよ、大人になるまで。隣でずっと待っとるから」
『…先輩?』
「…不安なんやろ?ずっと隣におるから、心配せんでええよ」
そう言って先輩はまたくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
あなたが待っていてくれるというのなら、少しずつ頑張ってみようと思う。
だから、
すぐ大人になるから待ってて
(…そうやって考えれるんは、)(立派な大人や思うんけどなあ)
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企画プリムローズさまに提出
そういえばサイトでは初白石
書ききれなかった気がするので、続きとか書けたらいいな!
…メリークリスマス!では!
2011/12/25 望月優花
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