気付いた恋心は止められない





今日、11月9日は
あたしにとって何の変哲もない、普通の日だったはずだ。


「すみません、望月さん…大丈夫ですか?」


目の前にいる男こと木手永四郎に、ええ、まあ…、と返すと、彼は苦笑しつつ、すみません、と再度謝った。

木手と言えば、テニス部部長、そして確か殺し屋の異名を持つ恐ろしい男、とクラスの男子が言っていた。

ま、テニス部の凜ちゃんや裕次郎と仲の良いあたしには、ただの、ゴーヤめがね、としかイメージがないのだけれど。


それはさておき、何故あたしがそんな有名人と一緒にいるかというと、30分前に遡る。

どうやら、今日は隣のクラスにいる誰かの誕生日らしい。
朝から女子たちが、プレゼントを渡すんだ!とそわそわしていた。

興味が無かったあたしに災難が降りかかったのは、終礼が終わり教室を出た時のことだった。

廊下には何かに群がる女子の姿。
誰かの誕生日なんだっけ、と思い出した瞬間、あたしの手は女子が群がるその中心へと引き込まれた。


「俺には、望月さんという大切な人がいるので、すみません」

その言葉に誰もがフリーズした。鳩が豆鉄砲を喰らったよう、とはこのことを言うんだと思う。

あたし自身もあっけに取られているうちに、木手くんは彼女たちに、それでは、と言うとあたしの手を引いたまま走り出したのである。



その後彼女たちのフリーズも解かれ、あたしたちの方へ向かってくるのを、階段を降りる直前、廊下の端に見えた気がした。

そして今に至る。


『謝んなくてもいいよ、大丈夫だから』

「そういう訳には行きません。貴女を巻き込んだのは、まぎれもなく俺ですからね」


そういう木手くんに、何と言葉を返せば良いのか分からず、あたしは疑問に思っていたことをふと口に出してしまった。


『何で、』

「何でしょうか?」

『何で、あたしを選んだの…?』


あの時、確かに女子の多くは彼に群がっていたかもしれないが、あたしの他にも普通に廊下にいる女子だっていた。

それに彼くらいの人なら、別に言い訳なんて、彼女がいる、以外にも言えたと思う。

押し黙る木手くんに、やっぱりいいや、と言おうとした時、彼から予想の範疇を大きく越える答えを告げられた。


「貴女を好きになってしまったからですよ」

『…え?』

「一目惚れです。二年前の入学式の日から、俺は貴女が好きなんです」


真剣さを帯びたその瞳に嘘は無く、あたしは胸が高鳴るのを感じた。

好き?…あたしは、木手くんを?

正直言って、話したことなど一度もないし、彼のことなんて全然知りもしないのに。


『…木手くん、』

「はい、」

『誕生日おめでとう』

「ああ、有難うございます」


短時間でこんなの可笑しいだろうけど、もう駄目なんだ。


『誕生日に彼女が出来る、って…プレゼントになる、かな?』


彼は目を丸くした後、すぐに優しく笑ってくれた。


「…ええ、最高のプレゼントですよ」



気付いた恋心は止められない
(これからお互いのことを、)(ゆっくり知っていこうよ)


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コロネです、初対面です
よく見かけるし名前は知ってるけども、みたいな状態

彼女と接触が無かったということは、コロネ様は凜くんや裕次郎には言わなかったんでしょうね!だって弱みのように握られそうですもん←

とりま、木手さんはぴばです!




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