優しく身体を包まれ、その人特有の匂いが鼻腔を擽る。暖かく、気持ちいい体温に息を吐きながら目を閉じた。
「おや、今日は随分とおとなしいですね」
「あぁ……少し疲れててな」
「貴方の少しほど信用できないものはありませんよ」
「……落ち着くんだよ…」
「……光栄です」
いきなり抱き込まれたものの、最近一緒にいれなかったから、いつもは一つくらい浴びせる文句も言うのをやめた。
というか、山南さんがこうしてくるのも珍しい。
何かあったのだろうかと考えていると山南さんは俺の身体を少し離し、顔を近づけてきた。
「っ……!?」
額に唇が、触れた。
「さ、山南さ……!」
「たまには、いいでしょう?」
俺の心を読んだかのような答えを告げて薄く笑ってまた額に唇を寄せてくる。
そのまま眦、頬、鼻と、次々唇を落としてきた。擽ったいし、気恥ずかしさで顔が熱い。
逃げてぇけど身体をしっかり捕まえられてるから成すがままだ。
「ぅ……っ」
小さい声が溢れる。震えを隠すように背中に回した手を山南さんの着物ごと握り締める。
固く目を瞑っていたから口の端に口吻けをされた時、大きく肩が揺れた。
うっすらと瞼を開けると、山南さんはゆったりとした微笑みを浮かべて人差し指を俺の口に押し当ててくる。
「ここは、どうしましょうか」
俺は目を瞬かせ渋い顔をする。
意地が悪ぃ。
この人のこういうところが苦手だ。
「したけりゃしろよ」
気に食わなくてそう返したら山南さんは驚いた後に苦笑して頭を撫でてくる。
「では、そうさせていただきます」
そう言って山南さんは笑みを浮かべて、腰を引き寄せて顔を近づけてきた。
唇に暖かい感触。
ゆったりとしたそれに俺は瞼を伏せた。
注ぐ
(与えられるだけってのも悪くない)
何か書いてなかった山土をトライ。
この二人は原土とは違う大人の色気を感じます。
初挑戦第一弾。