行くって前持って言ってたのに、何でお前は真っ先に俺のところに来てくれないの。
何で楽しそうに話すの。
そっちはいつも一緒にいれるじゃん。
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「なぐ……おい、人の部屋で寝るたぁどういう了見だ」
すっと襖の開く音が聞こえたかと思ったらごろりと畳に寝転ぶ俺へのお咎めの言葉を降らされた。
「おい」
「煩いな、俺は疲れてんだよ。寝てるからお前も仕事すれば?」
顔も見ずに告げると土方の気配が変わったのを感じた。
でも俺は土方を見る気になんて全然なれなくて、沈黙を突き通す。
「おい」
「…………」
「…………」
とうとう土方も諦めたのか話しかけてこなくなった。
まさか本当に仕事しだしたんじゃないだろうな。
そんなんだったら、流石に、……なんだ?
怒る?帰る?
……違うな。
多分、悲しい。
あぁやだな。無駄な意地張っちゃったかな。
だってこんなときどうすればいいのか分かんないし。でも絶対土方が悪いし……。
ぐるぐる思考が巡る。
だから土方の行動なんてまったく感じなかった。
ふと目の前が暗くなり何かと思ったら土方の身体が覆いかぶさっていて、更に唇が触れ合っていた。
すぐにそれは離され端整な顔がじっと見つめてくる。
「ったく、分かりやすい拗ね方しやがって」
ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜる土方になすがままだったがしばらくして我に返りその手を払おうとする。
「っ、おい、やめろ土方……!」
しかしいくらやっても土方は続けて撫で回していた。
何なんだ、わけ分かんないんだけど。
頭が混乱する。
すると、ぱっと動いていた手が頭から退いた。
「?、?」
乱れた髪を直しながら土方を見返す。
余程間抜け面を晒してしまったのか土方はくすりと笑って、それから俺の身体を抱き締めてきた。
「っ……お前、さっきから本当意味分かんないんだけど」
「……悪かったよ」
質問の答えになってない返答がきた。
訝しげに顔を顰めながら土方の次の言葉を待つ。
「何が」
「お前に構ってやれなくて」
パチリと瞬きをする。
俺の驚いた気配を感じたのか先程より強く抱き締められた。
「話しかけられて無視するわけにもいかねぇし、どうしたもんかと俺だって悩んださ。一応急いだつもりではいたんだが」
「…………」
「まぁ結果お前を待たせちまったんだからな。今回は俺が悪かったよ」
普段と違う、俺に向けての優しい低音は耳にとても心地よかった。
どうやら土方には読まれていたらしい。
あぁもう、何か悔しいな。
でもいい機会だしな。
「土方」
「なん、……!?」
形成逆転。
土方の肩を押して後ろへ倒してのしかかるように迫る。
吃驚している土方に笑みを溢してちゅ、と音を立てながら口吻けた。
「俺、まだ許してないんだけどなぁ」
「……そうか」
「悪いの、土方だよね?」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ……お仕置き」
ゆったりと口を弧に描いて囁くと土方の肩が僅かに震えてじっと見つめ返された。
「何か言いたいの?」
「…………いや。いいぜ、今回悪いのは俺だ。好きにしろ」
眉を下げて困ったように笑う土方に俺もニコリと笑ってまた口吻けをする。
「素直な子は嫌いじゃないよ、土方」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ、薫」
今日は優しくしてあげようかな、なんて考えた。
拗ねる
(唯一の甘え方)
うちの薫土は子供らしい南雲がスタンス!
嫉妬=恨みっていう感性が緩和していく南雲兄さんを見て嬉しく思ってる土方さんがいたら悶える。
アンク様、リクエストありがとうございました。