そんなに昔のことでもないのに、ひどく懐かしく感じた。





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何があった訳ではなかったが、いきなり目が覚めた。
数回瞬きをして部屋を見渡すと、月明かりに照らされて青白く染まっていた。
ふと、自分の頭が何かを敷いていることに気づいて寝たまま上を向く。
すると、真っ先に目に映ったのは目を閉じて船を漕いでいる幼さの残る寝顔だった。


「おおとりさん……?」


コクリと頭を揺らしながら寝ている大鳥をぼんやりと眺め、今膝枕してもらっているのかと把握した。
しかも、寝ている場所はソファらしい。


「……寝ちまってたのか」
「んっ……?」


呟いた瞬間、寝ていた大鳥が目覚めたようだった。


「ぁ……土方君、起きてたのかい?」
「さっきな……すまねぇ、今退ける」
「えっ、いいんだよ!僕がしたくてしたをだから!」


起き上がろうとすると大鳥に慌てて止められた。
不思議そうに見つめてくる土方に大鳥は恥ずかしそうに頬を掻いた。


「いや……君が寝ていたから少しでも楽にと思って勝手に頭を乗せたんだ……。すまなかったね」
「そうか……いや、よく寝れた」
「それは良かった」


実際心地良かったので素直に礼を言うと照れ臭そうに大鳥は笑った。
しかし、直ぐ情けなく眉を下げて顔を逸らされる。


「でも、君が起きるまで見守ろうとしてたのに結局僕まで寝ちゃって……はあぁぁ、かっこ悪いなぁ、僕」


薄暗い中でも分かるくらい顔を赤くさせる大鳥に土方は目を丸くさせたが、その姿に小さく吹き出した。


「わ、笑わないでくれよ……!」
「いや、すまねぇ……!」


くくっ、と喉を鳴らしながら土方は大鳥の持っている本が目に入った。


「大鳥さん、それなんだ……?」
「え?……あぁ、これかい?」


ムッとしていた大鳥だったが土方に差された物に正直に答える。


「ここで見れる桜の写真だよ」


見せてもらう本に写る桜の写真は土方の目を奪った。
白黒だがその美しさは十分に伝わり、きっと実際に見たら言葉を失うほど素晴らしいものなのだろう。


「綺麗だな……」
「だろう?」


率直な感想に大鳥は満足そうに答えた。


「この桜を、君と見れたらいいなと思ってね……」


目を閉じて静かに語る大鳥に土方はピクリと僅かに肩を跳ねさせた。
無言の土方に気づいた大鳥はわたわたと慌て出す。


「あ、その、ごめんっ。そんな立場じゃないのにね。えと、それより僕と一緒なんて、」
「そうだな」


大鳥の言葉を遮り土方は小さく漏らす。


「一緒に、見れたらいいな……」


何処か遠くを見るように瞳を細める土方を大鳥は黙って見つめる。
ただその瞳が揺らいでるように見えて、無意識に手を伸ばし体温の低い頬を撫でた。


「大鳥さん?」
「っ……、も、もう少し休みなよ。僕が付いてるから」
「……あぁ、そうさせてもらうよ。あんたが居ると落ち着くしな」


そう言うと大鳥の身体の震えが伝わってきて笑いそうになったがまた拗ねられても困るので我慢した。
目を閉じようとしたら髪を弄られたので気になり大鳥の顔を窺う。


「ん、何だ……?」
「土方君」
「おう」
「好きだよ」
「…………、俺もだよ」


優しい双眸と声に自然と顔が綻んだ。
それからゆっくりと意識が沈んでいく。
心は不思議なくらい、穏やかだった。















夢見る

(もう振り返りはしないから)
(でも、思うことくらい許してくれ)




















過去を「夢」で見る土方さんと、未来を「夢見る」大鳥さんの話。
あんま過去描写書けなかったんで分かりにくいですね。



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