*学パロ











「風間のばーかっ!もう知らねぇ!」
「おい藤堂、」


呼び止める声も聞かずに部屋を飛び出す。そのあとは全速力で家に帰って、怒りまくった。





───────





「マジ何なんだよあいつ!」
「……また喧嘩かよ。飽きないなぁあんたらも」


机を叩きながら発散できなかった怒りを叫ぶと目の前に座る友人から呆れた声音で返された。


「龍之介ぇ!お前他人事だと思いやがって!」
「実際他人事だろう?何をそんなに熱くなってんだ」


噛みつかんばかりに吠えてくる平助に龍之介は溜め息を吐いた。
夕日が照らすこの教室には平助と龍之介しかいない。
そこでする会話は友人の恋人の愚痴。


「どこの女子だ」


ぼそりと聞こえないように呟いて、顔を真っ赤にして頬を膨らます平助を見やる。
こうして愚痴を聞かされるのは初めてではない。
よくもまぁこんな頻繁に喧嘩出来るものだと感心してしまうほどだ。


「で?今度は風間先生と何で喧嘩したんだ?」


風間の名前を出すと平助の肩がピクリと跳ねてそのままワナワナと震えだす。
昨日のことを思い出したのか顔は凄い剣幕で、かっこいい顔が台無しだ、などと龍之介は場違いに考えた。


「だって……だってあいつ折角の休みだからって土曜日ずっと俺のこと抱いてたんだぜ!?日曜日は何もしねぇって約束したのに朝起きてものの二時間で結局手ぇ出してくるしよ!どんだけ絶倫なんだよあの変態保険医があぁぁぁぁあああ!!……って、どうしたんだ龍之介?」
「いや、うん……お前、恋愛に関してはめちゃくちゃ初なくせに何でそういうことは恥ずかしげもなく言えんだよ……」


一気に捲し立てていた平助だったが、龍之介の様子がおかしいことに気づいて言葉を止めた。
一方の龍之介は顔を手で覆い、隠しきれていない耳まで真っ赤にして俯いている。
首を傾げる平助に龍之介は大きく溜め息を吐いて顔の火照りを冷ますように手を扇いだ。
この友人は突然爆弾発言をしてくるから困る。


「……俺は、風間とゆっくり話したいだけなのに……」


先程とは一変してしおらしくなる平助を龍之介は無言で見つめる。


「平助……」
「もう俺龍之介と結婚するー!!」
「何でそうなるんだよ!!っおわぁ!?」


血迷った発言をした平助は机など気にせず龍之介に飛びついた。
いきなりそんなことされたらどうすることもできず、大きな音を立てながら複数の机や椅子と共に平助と龍之介は床に雪崩れ込んだ。
頭と背中を強か打ち付けた龍之介は抱き着いたままの平助の背中を非難の意を込めてバシバシと叩きながら呻く。


「う……ぐっ、てめ、平助お前、俺を殺す気か……!」


無言を突き通す平助に龍之介が再び声をかけようとした瞬間、教室のドアが開いた。


「おい、先程の物音はなん、だ……」


言葉を失った金髪に龍之介はざっと血の気が引いた。
むくりと起き上がる平助は風間に鋭い視線を向ける。
今この状態は傍から見れば平助が龍之介を押し倒しているように見える。
それを風間に見られたという事は、どうなるか、想像もつかなかった。


「あ、いや、これは誤解でぇっ?!」


必死に弁解しようとした龍之介だったが、いきなり腕を引っ張られ語尾が上がった。
龍之介を立ち上がらせたのはもちろん平助で、風間をキッと睨みつけたかと思うと龍之介の手を引っ張りその場から走り出す。


「っ、おい平助!?」
「待て藤堂!」


当然その後を風間も追いかけてくるわけで、誰もいない校舎に三つの足音が響く。


「藤堂!」
「うるせぇ!俺は龍之介と駆け落ちする!」
「……はぁぁああ!?何言ってんだお前!?」


思いがけない宣言は風間だけでなく龍之介も驚愕した。
何故か二人の痴話喧嘩に自分まで巻き込まれてしまっているようで、龍之介は顔を引き攣らせる。
呼びかけても平助は止まる気配を見せず、校内でも足の速い二人はどんどん風間を突き放していく。
その足は屋上へ向かっており、龍之介は平助が無計画に走っていることを悟った。


「おい、こっち行ったら完璧に捕まるんじゃ、」


屋上まであと一階である階段の踊り場まで来て龍之介が声をかけた瞬間、その動きは急に止められた。
平助に握られていた龍之介の手は勢いよくすり抜ける。


「りゅうのす、けっ……」


突然のことに平助が振り向くとそこには襟首を掴まれて噎せている龍之介の姿と見かけることの少ない姿があった。


「げほっげほっ、せ、せりざわさ……!」
「犬は本当に走り回るのが好きだな?随分楽しんでいたようではないか」


怪しげな笑みを浮かべる芹沢を龍之介は涙目で肩越しに見る。
全速力で走っていたのにも関わらずいきなり襟首を掴まれたものだから勢いよく首が締まってしまった。
苦しげな龍之介など意に介さないようで平助に目を向けて口を弧に描く。


「悪いがこいつは連れて帰るぞ。やらせることがあるのでな」
「なっ……へ、平助、」
「行くぞ犬」
「うえっ……!」


まるで嵐のようだった。
あっという間に龍之介を攫われてしまい平助はポカンと自分が置かれている状況も忘れて突っ立っていた。


「藤堂」


耳元に届いた声に振り返るとそのまま壁に追い詰められてしまった。
片手を壁につけ顔を覗き込んでくる風間は酷く不機嫌そうに見える。
平助は目を逸らして無言を貫く。
はぁ、と風間が息を漏らしたかと思うとすぐに身体を抱き締められた。


「ぇ……か、ざま?」
「貴様……先程の言葉、本気では無いだろうな」
「は?」


動揺が隠せなかった平助だったが風間の問いかけに思わず間抜けな声が出た。
先程とは、いつのことだろうか。


「まさか、龍之介と駆け落ちするっていうやつか?」
「…………」
「あ、あれは勢い任せというかなんというか……てか、お前何で抱き着いてんだ。俺はまだ、」
「教室であんなことをしているから、本気かと思ったぞ」


気持ちを落ち着かせるように肩口に顔を埋めて息を吐く風間に平助は目を丸くさせる。
確かに昨日の今日であるから見切りをつけて離れられたと考えてもおかしくはない。
しかし、この唯我独尊で俺様な風間がそんなことを考えるのだろうか。
でも、だとしたら、風間は自分から平助が離れていってしまうと慌てたという事か。


「ぶっ……くくく、お前……」
「何だ。貴様たちが普段あんなに近くにいるから俺は、」
「分かった分かった。うん、いいよ。今日のお前に免じて昨日のことは許してやるよ」


言いようのない優越感に平助は笑いながら風間の背中に手を回す。
僅かに震えた身体に更に笑って回した腕の力を強くした。


「俺にはお前だけだよ、千景」
「……ついでに、俺から離れないと誓え。平助」
「ちゃんと約束守れるようになったらなー」
「なっ……!」


普段見ないような反応に平助はとうとう大声で笑い出してしまった。
笑いすぎで涙を浮かべながら、顔を真っ赤にして怒る風間を引き寄せ、平助は礼だと軽く触れるだけのキスをくれてやった。















狼狽する

(思っている以上に大事にされていました)




















私のサイトじゃこの二人が一番糖度高くなります。
バカップル乙。
学パロでは龍之介君と芹沢さん初登場ですね。
龍之介君は平助と同じクラスの親友、芹沢さんは理事長設定です。
この二人は一緒に住んでます。
そこはかとなく芹龍要素を入れてみた。
メイン風平なのにおもくそ話逸れましたねごめんなさいw


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