*沖→土
「部屋に入られても気づかないって相当ですよ土方さん……」
第一声、呆れた物言いなのは事実なのだから仕方がない。
頭を押さえた平助君を介抱していた左之助さんに土方さんを起こしてきてくれと頼まれた。
聞いた話だと昨日は土方さんを連れて飲みに行ったらしい。
その際に土方さんは潰れてしまい、布団直行だったとか。
「馬鹿だな、お酒弱いくせに」
結果、酔い潰れた土方さんは朝になっても起きてこれなかったわけだ。
溜め息をついて土方さんを見下ろす。
僕としては左之助さん達と飲みに行ったことが気に食わないんだけど、言ったところでしょうがないんだろうな。
「はぁ……ほら、土方さん。早く起きなきゃ朝御飯食べられちゃいますよ」
しゃがみこんで土方さんの身体を揺するが、まったく起きる気配のない土方さんに内心舌打ちをした。
何で僕がこんなことしなきゃいけないんだ。
「……いい加減起きやがってくださいこの酔っ払い!」
勢い任せに掛け布団を引っ張がした。
寒さに土方さんは身動ぎ、ぼんやりと瞼を上げる。
「そ、……じ?」
「やっとですか。早く着替えて広間に、」
言いかけた言葉は遮られた。
寝起きの速さとは思えないほどの早業で、僕はただ呆然と首に掛かる重みを支えていた。
我に返るのはそう時間はかからなかったが。
「…ちょっ、土方さん!?何するんですか!」
「ん、ぅ……」
「なっ……寝惚けて……、土方さんってば」
起きて、と声をかけようとしたら更に密着してきて。
首筋にふに、と当たったのはきっと土方さんの唇だ。
溢れる吐息が直に当たって、背筋に震えが走る。
「っ土方さ……いい加減にしてくださいよ……!」
鼻腔を擽る土方さんの香が。
「本当は起きてるんじゃないんですか?」
首に回された細い腕が。
「早く……離してください、よ」
目の前に晒された白い肌が。
「……じゃないと、」
理性を狂わせる。
「本気で、襲いますよ」
かけた言葉に答えは無くて、渇いて痛みを訴えている目を伏せる。
閉じたそこに広がる水分と痛みと、熱さ。
こくりと喉を鳴らして布団についていた片手をゆっくりと土方さんの腰に持っていく。
「…………」
触れると寝巻き越しに体温が伝わってきて、手に力が入った。
「土方さん……」
心臓が煩い。
今にも、張り裂けてしまいそうだ。
閉じたままの瞼を震わせながら指を僅かに動かすと腰の線がはっきりとしてしまい、また鼓動が速くなる。
「────っ」
一拍。
「そ……う、じ」
頭に響いた声音に目を見開いて思わずその身体を掴み離した。
簡単に離れた土方さんはぐったりとしたまま寝息をたてている。
「はぁ……はぁ……」
緊張で上がった息を整えながら優しく布団へ寝かせてあげた。
「ぁ、…はー……」
大きく息を吐きながら両手で顔を覆って、ついでに前髪もぐしゃり。
気の迷いでとんでもないことをしでかすところだった。
「……もー…何で起きないんですか」
起きてくれれば、からかいながらその場を流せたかもしれないのに。
……そのまま流されちゃってくれたかもしれないのに。
「だから嫌いなんですよ」
想いの通じてないあなたほど嫌いなものはない。
僕だけ振り回されてるみたいで腹立たしい。
最近はそう思うようになった。
昔の嫌いと今の嫌いは別物だ。
「顔、洗ってこよ」
熱が残っているようだし。
こんなことで赤面なんて、自分で言うのもなんだけどまだまだ子供なのかな。
乱れた髪や着物を直しながら立ち上がる。
廊下に出る前に立ち止まり、後ろを振り返って綺麗な寝顔を見つめた。
「朝御飯、食べ損ねても知りませんからね」
そう残して部屋を出た。
あぁ、でも土方さんは今日非番だったかな?
ならたまには寝かしておくのもありかな。
そんなことをつらつらと考えながら身体に残る感触を忘れようとした。
触れる
(思ってた以上に温かく柔らかかったその身体を)
(独占してしまいたい)
土方さんを好きだと認識し始めた位はこんぐらい可愛らしくあってほしい。
で、時間経つにつれて余裕たっぷりサドな沖田さんに成長していってほしい。
しかも短期間でw
朱里様、リクエストありがとうございました。