僅かに震えながら肩に額を預ける土方さんに俺は何も言わずにいた。
力が入っていないぶらつく腕がなんだか悲しくて、さっきからずっとその手を握っている。









たまに、土方さんはこんな状態になる。
普段からは想像も出来ないくらい弱々しく、何かに怯えるように、堪えるように肩を震わし俺のもとへ駆け込んでくるのだ。
極稀に聞こえてくる嗚咽がまた、この人の精一杯の虚勢を伝えてくる。


「土方さん、辛いか?」


至極優しく問いかけると、しばらく間を置いて黒髪が横に揺れる。
この状態でこうして話しかけるのは初めてだ。


「じゃあ、苦しい?」


答えは、否。


じゃあさ、


「……俺は」





あんたの役にたってるか?




そう問うと土方さんの肩が大きく跳ねて、そのまま震えだした。
たくさんの時間が流れた。
もしかしたらほんの数秒だったのかもしれない。


「……ぉ、れはっ……」


土方さんがこうして話してくれるのも、初めてだ。


「負けて、られねぇ」


「うん」


「先に進んで、立ち止まっちゃ、ぃ、けねぇ」


「うん」


「……お前がいてくれて俺は、大分、すくわれてる」


「…そうか……でもな、土方さん、」





そろそろ、疲れてはいるだろ?





ひゅ、と息を呑む音が響いた。
辛くなくても、苦しくなくても、人間は誰でも疲れちまう。
それを抑え込んだら進めるものも遅くなっちまうよ。


「次に進もう、土方さん。俺の存在だけで救われないで」
「ぁ、……」
「一緒だって気づいてくれ。一人じゃないって気づいてくれ。今度は、頼って」


何もしないで黙っているのはもう終わりだ。
空いている片方の手を頭に回して一層肩口に引き寄せる。





「ここにいるよ」





離れない。

あんたが俺を求めてくれる限りは。





だから泣いていい。

俺が涙を拭うから。

何度でも、何度でも。






あんたがぶつけてくる全てを受け止めるから。















(そしたら次は、笑って会おう)




















頑張ったら報われるなんて信じられないかもしれないけど、その頑張りが思い出せた時が報われた瞬間じゃないですかね。



(12.3.11)




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