長閑な昼下がり…


プルート隊の詰所には鎧を着込んだ大柄な男が一人、物思いに耽っていた。



最近彼を悩ませている問題


それはあの世界を旅していた頃からは考えられないほど弛んできたお腹周り。


ほんの数か月前までは、見事なまでに割れていたのだが…




やはり男33歳


重力には勝てない身体になりつつあった。





ちょうどプルート隊の面々もそれぞれ持ち場に出ていて詰所には自分一人…



(騎士たるもの弛んだ身体では部下に示しがつかん!たまには筋トレでもするとしよう…)



真面目すぎる彼は一人おもむろに腹筋を始めるのであった。





意識をただひたすら腹部に集中させて…


97、98、99…

100回を迎えようとした時、突然詰所のドアが開けられた。



すっかり自分の世界に入り込んでいた彼は、その音に異常なまでに驚き固まってしまった。




「スタイナー隊長、なんでそんな所に座ってるんですか!?」


「な、なんだハーゲンではないか。自分は腹筋を鍛えておったのだよ。それよりお前仕事はどうした?」


「あ、そうそう忘れ物を取りにきたんですよ!!コレコレ…」


目当てのグローブを手にしてそそくさと詰所を出て行こうとするハーゲン




「兵士が防具を装備し忘れるなど話にならん!!」


そんな部下に一言喝を入れようと立ち上がるスタイナー



しかしそんな彼の背中に突如電流が流れた





「うおぉっ!?」


「隊長どうかしましたか?」

「って、もしや腰…?そんな鎧着込んで腹筋なんかしてるからですよ〜」


馬鹿にしたような発言にも、スタイナーは激痛のあまり言い返すことができない。




「あ、そうだ!ちょっとまっててくださいね〜」


何か思い出したようにそう言うと、熱血な部下は小走りで去って行った…




(全く…最近の若いのは自分の上官を労ることも出来んのか)



ブツクサと愚痴を言いながら何とか激痛に耐え、机を支えに立ち上がるスタイナー





その時再び詰所のドアが開けられ、その隙間から姿を現した美女の姿にたちまちスタイナーの心拍数は上昇する





「貴方の部下のハーゲンから報告を受けて参りました」


「鎧を着たまま腹筋をして、その結果がギックリ腰だなんて…」



ほとほと呆れたようにため息を吐くベアトリクス




「わ、我ながらな、情けないのである」


叱られた飼い犬のようにシュンとなるスタイナー





「ガーネット様の許可は得ています。今日はもう帰りますよ」


そう言い放ち先に部屋を出て行こうとするベアトリクス




「ま、待ってくれぬか!!」


その背を摺り足でなんとか追いかけようとするスタイナー





「…全く…仕方ないですね…」


口調は冷たいけれど、少し照れたような表情のベアトリクスがスタイナーに肩を貸す




「面目ない…」





途中持ち場に立っている部下たちの好奇な視線をまともに浴びながらも

二人寄り添いながらなんとか城を後にし、城下へ渡る船に乗り込み家路へ着いた…



今日くらいはベアトリクスが自分に優しくしてくれることを期待しながら…



戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -