LOVEREND..?


「ねぇ睦月」

『何ですか?』

「俺達、別れよう」



何の前触れもなく、折原臨也は笑顔で彼女…篠原睦月に対してそう話を切り出した。

彼女に飽きた訳でも、ましてや嫌気が刺した訳でも無い。むしろ大好きさ。だからコレは、いつもの俺の悪い癖。少し睦月を虐めてみたくなっただけの、ちょっとした好奇心だ。僅かに瞳を見開き、いきなりの事に驚いて固まっている彼女が、次に見せる反応は何なのか。折原臨也は、堪えきれずにクスリと笑みを深める。

さぁ、ショックを受けた顔を見せて。



『分かりました』

「(……、…あれ?)」



睦月は俺の顔を見た後、アッサリとそう言って奥の部屋へと引っ込んで行った。特に驚いた様子もなく、いつもの様に自然な感じで。これはちょっと予想外だ。もう少し驚いたりショック受けたりと、困惑が表情に出るかと思ったのに。それとも今頃、引っ込んだ部屋の中で混乱しているのだろうか?と、気を取り直して少しそんな期待をしてみたんだけど……俺の考えはまたしても甘かった。



スチャッ

『さようなら。短い間でしたが、お世話になりました』



一度奥の部屋へと引っ込んで行ったかと思えば、五分弱程でアタッシュケースを抱えて睦月は出て来て、何食わぬ顔で俺に対して淡々と別れの挨拶を告げてきた。またしても顔色一つ変えずに。



『波江さん。短い間でしたが、今日までお世話になりました』

「貴女が居なくなると、本当に残念だわ。また私が面倒臭い彼の話相手をしなきゃならなくなるもの」



仕事中の波江にも挨拶をして、波江の方もあっさりと挨拶を返して。睦月はやはり特に表情を変えずに、そのままスタスタと玄関に向かって歩き出して。何だかデジャヴュを感じてしまったこの展開に焦ったのは睦月ではなく、臨也の方だった。



「ちょ、行く宛は!?」

『取り敢えず駆け込み寺へ』



シズちゃん宅かよ!!!

あまりにもあっさりと答えを返してきた睦月に対して、臨也は本気で焦った。もっと動揺を見せるかと思ってたのに、これは完全に俺の想定外の事態だ。しかも、よりによってシズちゃんとか!!



「待ってごめんなさい。俺が悪かった。さっきのは嘘なんです」

『……わかりました』



気付いたら、俺は睦月を引き止めに玄関まで走って追い掛けていた。玄関の前で足を止めてくれた彼女に、俺は内心かなりホッとしていたりする。またあの時の様に無視を決め込まれるんじゃないかと、実はかなり胆を冷やした。柄にもなく玄関の前まで本気で追い掛けてしまった位。

そんな余裕が無い俺の方に睦月は振り返ると、彼女はアタッシュケースをパカリと開けて見せた。その中身は空っぽで。え?と、思わず臨也の目が点になる。



『私も嘘です』



開いた口が塞がらないとは、正にこの事だろう。思わぬ展開の予想外なオチに、無駄に脱力してしまった。いや、確かに彼女がどんな反応を見せるのか期待したのは俺だけどさぁ…



「また君を侮っちゃった…」

『でも荷物は本当にいつでも出て行けるようにしてあるのでそのつもりで』



さらっと笑顔で(しかし目が笑っていない)言ってのけた睦月の言葉に、再び固まる臨也。

それを見てた冷静な波江はため息を溢す。それはいつ事務所を変えても直ぐ自分も付いて行けるようにの備えでしょ。全く、本気で気付いてないなんて……どうしょうもなくノロケてるわね。と思いながら、今日も仕事を続行してたとか。

―――――――――
このED後設定だと、どうやら睦月は臨也と同棲を始めた模様。

今回振り回されたのは臨也さんの方でしたという。ちなみに波江さんは完全に悪ノリです(笑

ていうかこの話を4月1日に更新すべきだった…!(実は書きかけて放置してあった)と後悔しても後の祭りですが←
  
 
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