愛してるの言葉より


「俺は人間を愛してる。でも、睦月の事は……俺の人間への愛以上に、好きって気持ちの方が強いんだ」

『な、何か矛盾してませんか?評価段階的に…』

「でも、睦月が本気で好きなんだから仕方ないだろ」



いつになく上機嫌な臨也さん。恥ずかしくないのかこの人は。対照的に、今の私は耳まで真っ赤になってるに違いない。

……不思議だよね。臨也さんから愛してるって言われるより、好きって言われる方が、私に向けられる確かな愛情を実感するなんて。

普通なら、好き、大好き、愛してるの順に段階が上がっていく筈だけど……どうやら彼の中では違うらしい。確かに、臨也さんの基準が博愛だとした時、その一般的な評価の基準は彼には当てはまらない。

逆に、あの時に彼から「愛してる」なんて囁かれてたら、私は臨也さんの言葉を信じられずに、この世界にとどまる事を選べなかったと思う。

私が臨也さんに抱いてるこの感情が、果たして愛と言える程大層なモノなのかは……正直な所、まだ分からない。確かに、私は臨也さんが好きだ。それはもう否定はしない。

この世界では、歪んだ愛やら思想を持つ者達が多いけど……自分はどうなのだろう。この想いが歪んだモノなのか、それとも純粋なモノなのかは、今でも判断がつかない。

愛情の形は人それぞれというのなら。真っ赤になってる自分の顔が、何よりの答えなんだろう。



「あれ?照れてるの?」

『うぅ…あまりいじめないでくだ…ひゃう!!?』

「ハハッ、可愛いね♪」



なんて至極楽しそうに耳を甘噛みしてくるものだから、ビクッと肩がはね上がった。…変な声が出た気もするけど、これもお酒に酔ってきたせいだと思いたい。

一仕事を終えた後の晩酌に付き合って。と臨也さんに言われて、一緒に呑み始めた数時間後の結果がこの現状です。結構ハイペースだなぁ…とは感じていましたが、気付いた時には臨也さんはすっかり出来上がってしまっていたという。私もあまり強い方ではないので、チビチビ呑んでるけど……このままだと、私もつられて呑み過ぎそうでちょっと恐い。



『い、言ってる傍から…っ』

「ごめんごめん。睦月の反応が面白いから、ついいじめたくなるんだよね」



私の髪を指に絡めながら、臨也さんはクスクスと楽しそうに笑っている。ああ、また遊ばれてるな…とは思うものの、私にはどうする事も出来ない。所詮は惚れた弱み、というやつです。

とはいえ、臨也さんの言葉も、嫌味を挟まないストレートな言い方が増えた気がする。しかし、その理由も私の反応を楽しむ為の様な気がしてならない…

だからかな。私は未だに、臨也さんみたいにストレートな物言いどころか、彼に対してあまり素直になれないでいる。



「ほらほら、睦月も今日は飲もう!とことん飲もう!」

『え?まぁ、飲めなくもないですけど…臨也さん大丈夫ですか?もう既に結構飲んでる気が…』

「大丈夫大丈夫。俺、下戸だから」



既にテンションがおかしい自覚がない時点で絶対下戸じゃないだろ。というツッコミは、お酒と一緒に何とか呑み込んだ。酔ってる状態で下手に彼の機嫌を損ねると、どうなるのか予測がつかない。この調子だと、臨也さんが酔い潰れるのも時間の問題だろうし……まあ、様子見も兼ねて、もう少しだけ付き合ってあげようかな。幸い、もと居た世界でもお酒を呑んだ事はあるし、その際酔いつぶれる様な事も私には無かったし。私もお酒は嫌いじゃないから、たまには良いか。と。そこまで深く考えずに彼の誘いに頷いた私は、引き続き臨也さんの晩酌に付き合う事となった。


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アニデュラ二期が始まったのを記念して、久し振りに日常崩壊をアップしてみました。書き掛けで放置されてた番外編(ED後)を仕上げた次第です。ちなみに、この話はもうちょっとだけ続きます。

…R指定要素を挟みたくなったけど自重しました(ボソッ
  
 
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