進撃のトロール

野生の トロール が現れた。

まったくもう。空気を読まないトロールのお出ましだ。そんなに駆逐して欲しいのか?

あ、私が直接手を出してハー子を助ける気はないよ。ロンの見せ場を奪っちゃ駄目でしょ。せっかくの三人が仲良くなる機会を潰しちゃ駄目だ。私がするのは、あくまで茶々入れなのだから!



「(お前もう帰れよ)」

『(だが断る!)』



危機的状況にも関わらず、きっちりヴォルにはツッコミを返します。まぁ、トロールなら精神世界でだけど、魔法の実戦訓練代わりに戦った事もあるので、現在悲鳴を上げているハー子と比べて少しだけ余裕があるが故に成せる技です。

そんな現在の状況はと言いますと。取り敢えずハーマイオニーを再びトイレの個室へと押し込み、私はプロテゴで器物破損の破片から身を守っている真っ最中です。ハーマイオニーの悲鳴や興奮したトロールの不快な雄叫び、トロールの暴走によって壁やタイルが殴り壊される音やガラスの割れる音がトイレに木霊する。うん、十分過ぎる程に危機的状況だね!巻き上がる粉塵のせいで視界も悪いし。…ん?ちょ、おい待てトロールお前何を掴もうとしてやがる便器はマジで止めろよ不衛生過ぎる…って、言ってる傍から便器投げんなきったねぇえええ!!思わず魔法で跳ね返したら便器がトロールの顔面に直撃した。ざまぁ!

しかし、今の中途半端に軽い反撃のせいで、トロールを逆上させてしまった様で。野太い雄叫びを上げながら更に棍棒を激しく振り回して此方に突進してきた。しまった。やり過ぎたか…と内心舌打ちしつつ、返り討ちにしてやろうかと身構えたら、



「「ハーマイオニーっ!?」」

「…っ、ハリー!ロンっ!」



タイミングが良いのか悪いのか、ハリー達が現れた。トロールの気もハリー達の方に逸れる。その後は、私の知る展開と同じだった。ハリーがトロールの頭にしがみ付いて鼻の穴に杖をぶっ刺して、ロンが浮遊呪文を使って獲物を屠るイェーガァー(トロールの棍棒)でノックアウトさせていた。素晴らしい連携プレイだね。立体起動装置無しでよくやる……って、それより魔法で片付ける方が断然簡単な訳だけど。



「な、何でリクまでここに…!?」

『誰かさんが私の友達を泣かせてくれたからだよ』



驚いているハリーにそう笑顔で答えると、ロンが罰の悪そうな顔をしていた。フフフフ勿論ワザとですとも。ハリーがトロールのスボンで杖を拭き取っていると、急に扉が開く音がして、バタバタとした足音と共に、騒ぎを聞き付けた教師陣が現場に到着した。

マクゴナガル教授とセブ。そして、私からしてみれば白々しい事この上ないクィレルが、よーやく現れた訳だ。トロールの姿を見るなりビビってトイレに座り込むという演技を早速かましている。トロールの騒ぎで騒然となる大広間で、どさくさ紛れに倒れたクィレルの後頭部(すなわち帝王の顔面)を踏んづけてやれなかった事が非常に悔やまれる。



「一体全体あなた方はどういうつもりなんですかっ」



本気で怒っているマクゴナガル教授を見るのは初めてだ。なんて思ってたら、トイレの個室からハーマイオニーが出て来て、未だに震える体を抱き締めながら、何とか声を上げた。



「マクゴナガル先生、聞いて下さい。二人とも、私を探しに来たんです」

「ミス・グレンジャー!?」

「私がトロールを探しに来たんです。…リクは危険だって止めてくれてたけど……私、一人でやっつけられると思ったんです。あの、本で読んでトロールについては色んな事を知っていたので」



規則を破るのを嫌うあの真面目一徹ハーマイオニーが、教師に対して嘘の証言をして、ハリー達を庇ったのだ。これはなかなかの成長ではなかろうかと、お姉さんは思うのよ。

と、ここでトイレの奥にいたハーマイオニーの存在に続いて、この場に私までいた事に気付いたセブが、一瞬物凄く驚きの表情を浮かべた後……今度は直様鋭く冷たい視線を向けられて、私は内心ヒヤリとした。



「リクは、私と共に来なさい。話がある」

『…はい』



いつもより低く、冷たい声だった。それはまるで、私を失望させるなと、冷たく突き放す様な印象で、思わず俯いてしまった。ハーマイオニーが何とか私に助け舟を出そうと試みてくれたが、他寮の事に口を出すなとピシャリと言われてしまっていた。寮に帰るよう促されたハリー達から気遣わし気な視線を向けられるも、気にするなの意を込めて、リクは彼等を見送る事しか出来なかった。

 

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