迷走疾駆(1/12)

神託の盾騎士団本部にある地下訓練場は、現在兵士達の屍(あ、皆さん生きてますよ)が山と化していた。

何故こんな景色が広がっているのかというと、最近彗星の如く現れた正体不明の導師守護役が、道場破りヨロシク、突然訓練していた彼らに模擬戦を申し込み、尽く挑戦者を倒していった結果である。

そして、そんな訓練場の中心には互いの武器を携え、対峙する紅と漆黒の二人の姿があった。紅とは鮮血のアッシュの事であり、今日の彼の眉間にはいつもより深〜いシワが刻まれており、彼の機嫌が非常によろしくない事が良く分かる。彼が、本日最後の挑戦者である。

対する漆黒は、皆さん御察しの通り……正体不明の導師守護役こと、騒ぎの張本人である道場破りこと、偽名ユリア(イオン命名)。その実態は、ローレライ教団最高指導者、第2導師サク!その人である(ピースピース♪)。

さて、ここでまできて浮かぶ疑問は、何故アッシュが此処にいるのかという事である。それは、訓練場近くを偶々通り掛かったアッシュの脳天に、偶々私の手からすっぽ抜けた木刀が直撃したんだよね……別に狙った訳じゃないのに。彼に狙いを定めて、プロ野球選手並のコントロールで直撃させてなんていないよ。全てはユリアの思し召し……私の今の偽名もユリアだけど。

そして何故かキレたアッシュに「表へ出ろ!」って言われ、『面倒だからお前が此方に来いや!』って言い返したらアッシュは眉間の皺を倍増させながら「上等じゃねーか……」と私の対面まで来て現在に至る。

そんな経緯を得て、訓練場にあった木刀を構える私と、真剣を構えるアッシュ。……あれ?普通ならコレ私死亡フラグですがな。



「神託の盾騎士団特務師団師団長、鮮血のアッシュ。いくぞっ!」

『詳細不明の導師守護役ユリア!いざ尋常に勝b「瞬迅剣!!」…って、それはフライングですよアッシュ特務師団長!!』



私が言い終わるよりも早く突っ込んできたアッシュの突きを紙一重で飛び上がって避けながら、私は突っ込みを入れる。ていうかアッシュさん。今あなた微妙に本気で斬りかかって来ましたね?



「逃がすかっ!双牙斬!!」

『ちょ、バリアー!!』

「チッ、詠唱破棄した譜術まで使えるのか!」

『うわ!?デコが近いですエナジーブラスト!!』

バチィッ

「デコとか言うんじゃねぇっ!!」



譜術で木刀を強化させ、咄嗟にアッシュの剣を受け止める。剣と木刀によるつばぜり合いになり、私は初っぱなから惜しみなく譜術をぶっ放し、アッシュから距離を取る事に成功した。純粋な力技だと押し負けるからね。



「テメェ、譜術を使うとか卑怯だろ!!」

『木刀相手に真剣を使ってくるアッシュ特務師団長に言われたくありません』



もう一つ言うなれば、そして私の場合、打撃と譜術を併用して戦ってこそ本領が発揮されるタイプの戦闘スタイルなのだ。

第一、私のメイン武器は木刀じゃないし。いつも模擬戦で使い込んでるから、ある程度使いこなせはするけど。



「譜術を使うなら此方も本気でいくぞ!」

『では、私も木刀ではなくて愛用の武器使わせて頂いても宜しいですね?』



何かを詠唱しながら突っ込んで来るアッシュを前に、サクは木刀をポイッと床に放り投げた。戦闘中に武器を捨てるという、私の有り得ない行動を目の当たりにし、てめぇフザケテんのかとアッシュがキレる。きゃーこわい(棒読み)

一瞬で距離を詰めてきたアッシュの譜術が発動する直前、私はその場から飛び上がり、コンタミで武器を取り出した。知る人ぞ知る、BCロッドだ。



『いきますよー?』



体重と落下速度を乗せて、ロッドを振りかざす。対するアッシュのモーションから、ロッドを剣で受け止めると同時に譜術を放って迎え撃とうとしている様子。相手の攻撃パターンを先読みし、サクはニヤリと笑みを浮かべた。手の内がバレバレだぞ、アッシュ!



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