導師と守護役達の日常(6/6) 今日もイオン様の執務室に、サク様が尋ねて来た。『今日はゼリーを作って来たよ〜♪』なんて楽しそうに言いながら、テーブルの上にお茶の準備を広げ始めて。それを見てアタシが慌ててお茶を淹れた後、そのまま三人で休憩に入るのが、最近定番になりつつある。 『あれからどう?仕事はスムーズにし易くなった?』 「へ?」 ちょうどイオン様が席を外したタイミングで、突然サク様からそんな事を訊かれた。あれからとは、いつの事だろうか。心当たりがあるとすれば、サク様が仲裁に入って下さったアリエッタの件くらいだ。確かに、あの日以降アリエッタは私に突っかかって来てはいない。 「あ〜、はい!お陰様で大丈夫ですよ!」 『良かった。こっちの方でも、取り敢えず、リーダー格っぽいのと取り巻き二人は片付けたんだけどさ』 …うん?リーダー格?取り巻き二人?サクの言葉に違和感を感じ、アニスは思わず首を捻る。どうやら、アリエッタとの件ではなかったらしい。 『あの時は本当にまいったよ。私が処理する分の書類までびしょ濡れだしシンクは怒るしディストもしつこくてさー』 「(びしょ濡れの、書類と…ディスト……。…っ…!?!)」 この二つが記憶と繋がった瞬間、アニスの顔面は一気に蒼白になった。 思い出した。そう言えば先々週位前に、バケツの水を同僚(正直あんな奴等を同僚と呼びたくないけど…)に浴びせ掛けられた事があった。そして、おそらくその現場をサク様に見られていたのだ。あとシンクにも。 あの後、落ち着いてから仕事に戻った後も何故かお咎めが無く、どう言う訳かあの書類もイオンの手許に届いていて、不思議に思ってはいたのだが……。この口振りから察するに、どうやらサク様があの事後処理も含めて何とかして下さっていた様だ。 「も、申し訳ございませ…」 『あ、謝らなくていーよ。もう解決したし、アニスの方も今はスムーズに仕事が出来てるみたいだし』 一件落着ー。なんて言いながら、私の謝罪を遮ってのんびりと伸びをしている。そう言えばさっき、アイツラは片付けたから…って仰ってた気が…。言われてみれば、前はあんなにもしつこく嫌がらせをしてきていたのに、あの日以降パッタリと止んでいる。それどころか、最近アイツラの姿を見掛けてすらいない。アニスの表情が引き攣り始める中、気付いているのかいないのか、サクは呑気に紅茶にてを伸ばしていた。 『まぁ、偶然だったとは言え、今となっては、余計なお世話だったかもね』 「?と、仰いますと…?」 『ディストにトクナガを改造して貰った時に、食堂で一暴れしたでしょ?アレで他の守護役達はアニスの実力を認めたみたいだよ』 「あー…アレ、ですか……」 『うん。導師イオン付きの新しい導師守護役は、死神ディストを退ける天才パペッターだって、ちょっとした噂になってる位』 至極楽しそうに、この第二導師様はニコニコと笑っている。やっぱり、この第二導師様の方は、ぽやんとしたイオン様と違って、ちょっと侮れない所がある人だ。 『…アニス』 「は、はい!(今度は何〜!?)」 『イオンの事、よろしくね』 「…!」 先程迄とは違う、何処か真剣味を帯びた眼差しに、アタシは居心地の悪さを感じながらも、ソレを表情には出さずに「はい」と頷いた。 ――――――――― Side.Aniseにて騒動の後日談。 アリエッタとの件はまた別の章にて。 *前 | 戻 | 次#
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