導師守護役(1/10)

シンクを助けた日から、暫く経った。

シンクはルークと違って刷り込みがある分、必要な基礎知識(言葉や日常生活動作)を覚えるのが早かった。2日位で後者はマスターしたし。

最近文字を完璧に覚えたシンクは、私が書類を片付けている間、本を読む事が多くなった。今も近くのソファーに座って読書中の様子。仮面は、今は必要無いので着けていない。

そして私は導師の仕事…ぶっちゃけ、書類に判子を押す仕事(ぇ)を部屋に持ち込んでたりする。

本当は専用の執務室もあるんだけど、シンクが来てからはほとんど此方で仕事をしている。仕事の傍ら、彼に勉強を教えたりもしているからだ。



「サク、お腹減った」



シンクに声を掛けられ、書類に判子を押していたサクは、一旦手を止めて時計を見上げる。



『ん、そろそろお昼だね……何が食べたい?』

「……サクが作る物」



まだまだツンデレ要素が薄い、素直なシンク。アリエッタ並に可愛い過ぎだと思う私は親馬鹿だろうか。

彼がこんな風に自分の要求を訴えてくる事は、わりと最近になってからだったりする。レプリカである為、自我が薄かった……のかもしれない。

何にせよ、せっかくご指名を貰ったんだ(細かいリクエストでは無いものの)。早速昼食作りに取り掛かろうではないか。

本を閉じて此方を見ているシンクに微笑み返しながら、サクは立ち上がる。部屋の中に台所があるから便利だよね……無駄に広いし。



『シンクも一緒に作る?』

「……うん」



コクりと頷き、私の後ろについて歩くシンク。ああもう、素直過ぎるシンクは本当に可愛い(以下略)。

ちなみに、本日のメニューは炒飯。そこ、手抜きとか言わない!昨日はカルボナーラだったんだからね!別にオムライスだって出来るよ!



『よし、じゃあシンクには葱を切って貰おうかな?』

「分かった」



余談だが、シンクは手先が器用だから、料理を覚えたらかなりの腕前になりそう。見たまえ、この寸分狂わぬ見事な刻み葱を!

その間に私は卵を溶いてご飯を炒めにかかる。ん〜、育ち盛りのシンクの事を考えると、もう少し野菜が欲しい今日この頃。



『葱の他に、にんにくやニラを入れても良いし、エビなんかも美味しいかな』

「ふーん」

『ポイントは炒める前にご飯に卵を混ぜるか、マヨネーズをかけるとパラパラの炒飯が出来るんだよ〜』

「ふーん…」



シンクがじっと中華鍋を覗いてる隣で、炒飯の味付けしてシンク作・刻み葱を投入。シンクの素っ気ない返事から料理に興味が無いのかと思えば、後から聞くとちゃんと作り方を覚えてたりするから、興味が無い訳ではないらしい。

現に、中華鍋の中を覗いたりと、何気に興味津々な様子。それがまた可愛いかったりするんだけどね。

はい、そうしてる間に炒飯の出来上がり!導師サク様の三分クッキングでした〜(三分以上掛かってるのはスルーして)

お皿に盛り付けて、食べる前に手を合わせて、はい!いただきます。



『……味はどうかな?』

「…………美味しい」



一口食べて、ちょっと考えてからシンクは答えた。それから黙々とスプーンを進めている様子から、味は悪くないと見た。

自分でも食べてみて、合格ライン(というかいつもの味)だったからオッケーだろう。



『私の手料理を食べてるのは、今の所シンクだけだぞ?』

「僕だけ?」

『そ、シンクだけ』



キョトンとした顔のシンクが可愛いくて、思わず笑ってしまう。うん、もう私親馬鹿でも何でも良いや。

今日は午後からどうしようかなぁ。書類も区切りの良い所まで片付いたし、シンクも本を読み終えたみたいだし……



『此れを食べ終わったら、図書室へ新しい本を借りに行こうか?』






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