導師様がゆく!(8/13)


「葬刃冥斬封!」

『ホーリーランス!』



フレイルがソードダンサーを斬り上げながら空中に飛び、数回斬ってから急降下して地面に突き刺す。ソードダンサーがダウンし、フレイルが退くタイミングに合わせてサクも詠唱破棄した譜術を発動させる。



「雷雲よ、我が刃となりて敵を貫け!サンダーブレード!」

「いきます!スパークウェブ!」



クロノが放った譜術により発生したFOFにアリエッタが被せ、更に威力が向上した術を放った。アリエッタが使役する魔物の援助もあると良かったんだけど……無い物ねだりはしても意味はない。



『…っとぉ!?』

ガキィンッ バチバチィッ



咄嗟に剣をBCロッドで受け止め、もう一本の腕には防御壁を展開して防ぐ。そこから直ぐ様攻撃に転じる為の譜陣も二重に展開する。本当、腕が二本以上あるとか反則だよ。二人掛かりでも対処仕切れてないし!



『荒れ狂う流れよ、地への誘いに絶叫を奏でん!スプラッシュ・マウンテン!』



防御壁を解くのと同時に、水属性の譜術を地属性のFOFで変化させた技を放つ。あ、無論FOF変換の法則は無視の方向で。



「散沙雨!」



無数の連続突きで敵を切り刻むフレイルは、いつの間にか二刀流になっていた。かなり本気を出している様子が窺える。

それにしても、こういう緊迫した戦闘をしてると思い出すなぁ、スパルタできつかった修行時代(といっても一年と半分位前)。攻撃は最大の防御なり、という持論を説くカンタビレ教官との相性は良かったと思う。私の戦闘スタイルも典型的な攻撃型だし。防御一徹は丈に合わないんだよね。



「全員下がって!」

『「「!」」』



クロノが何かやる気らしい。ソードダンサーの剣撃にわざと弾かれ、更にバックステップで回避しながら後退する。その間にも簡易詠唱をし、完了と共にグランドダッシャーを放って確実に距離を取っておく。



『図体がデカイ癖にスピードもあるとか……本当、やっかいだよね〜』

「サク様、言葉遣いが荒くなってますよ」

『大目に見てよ』

「ディバインセイバー!」



無駄口を叩く一方でクロノの大技が炸裂。巨大な風のFOFが出来てるので、隙かさずサクが術を重ねてエクスプロードで畳み掛けておく。ソードダンサーがダウンし掛けた所をフレイルが断空剣による上昇斬りで敵を無理矢理打ち上げ、更にアリエッタも後に続けてネガティブゲイトを発動させてコンボを重ねる。誰一人として攻撃に情け容赦無い。

何気にクロノは参謀も出来そうな頭のキレ具合だよね。作戦の指揮を上手く取ってるし。クロノのこういう所にシンクが似たのかも。



「!気を付けて!!」

『任せて♪』



アリエッタがソードダンサーのオーバーリミッツ発動前にいち早く気付き、サクが直ぐ様超振動で強制キャンセルさせる。ついでにグラスチャンバーも忘れずにドロップしてみたり。そこ!セコいとか言わない!!



「爪竜連牙斬!」

『タービュランス!』

「獅吼爆雷陣!」



……て、いやいやちょっと待ちたまえ。獅吼爆雷陣て……フレイルはどこまでガイなんだ!どうやらシグムント流剣術の使い手でもあるカンタビレから、いくつか技を伝授してもらった様子。あの人もホド出身らしいし。でもあれってシグムント派の剣技って門外不出じゃないの?という疑問は、カンタビレ教官ですから、という一言で片付いてしまうから、何とも言えない。



「敵の動きが鈍くなってきてる…です!」

「うん。相手の体力は確実に削れてる。このまま全員で一気にカタを付けるよ!」

『オッケー』

「分かった、です」

「了解しました」



三者三様な返事を返しつつ、身構える。フレイルがソードダンサーを惹き付けている間にクロノはフレイムバーストを放ってFOFの準備を整え、サクが反則技の詠唱を進める。



『禁術いきます!時の流れよ、今一度零の時を刻め。神の御技を今ここに…タイムストップ!』

――…キィンッ!



時の流れが遮断され、ソードダンサーの動きが止まった瞬間、フレイルは一気に敵の懐に入った。用意しておいたFOFが反応し、フレイルを中心に炎が巻き上がる。



「炎よ、この剣に宿れ!焼き尽くす!炎覇鳳翼翔!!」



それフレンの秘奥義!!!

燃えろぉおっ!!と炎竜を放つフレイルを見て叫びたくなった。フレイルがフレン過ぎる……



「始まりの時を再び刻め!倒れて!ビッグバン!!」

「慈悲深き氷嶺にて凄烈なる棺に眠れ!フリジットコフィン!」



間を置かずにアリエッタとクロノがFOF変化を駆使して大技を決める。



『音素よ集え、我に従え!終焉の導きを彼の者に示さん!全力全開、エンド・オブ・フラグメント!!』



もう一押し、という所に続けてサクが秘奥義を叩き込む。が、ソードダンサーはまだ倒れずに立っていた。しぶといなぁ…取り敢えず、最後にもう一発禁術辺りをいっとくか…



「これでとどめだ!白夜殲滅剣!!」



……と思ったら何とフレイルがアスベルの秘奥義を決めて来た!!?えええこれは完全に予想外だよ!しかも大技放った後の反動からくる硬直無し!?(私も無いけど)フレイル強過ぎ!!

繰り出された斬撃の後にソードダンサーを一閃、ソードダンサーは見事真っ二つにされ(マジで!!?)、フレイルは剣を鞘に納めた。

禍々しい音素が霧散し、ソードダンサーは元の剣の姿に戻ると、その場からスゥ…と消えていった。

ワォ、ソードダンサー相手にかなり短時間で決着が着いちゃったよ!何だかこのメンバーなら、隠しボスも楽に倒せそうな気すらしてきた。



「何とか倒せた様ですね…」

『うわ〜、久し振りに全力出したかも…』



軽く肩で息をしながら、四人全員その場で脱力する。流石の皆も疲れたらしい。



「ていうか、何でアンタはローレライの輝石を使わなかった訳?」

『………その手があったか』

「馬鹿」



クロノの指摘通り、確かに輝石を使ってローレライの加護を受ければ、もっと早く片付いたかもしれない。別に羽根付きの状態を見られても問題無いメンバーだし、本当に使えば良かったかも。



「さっきの敵……消えちゃった、です」

「出来ればもう二度と遭遇したく無いね……あんな化け物」

『右に同じく…』



激しくクロノの意見に同意する。けど、クロノやフレイルが強者として妖刀に選ばれてしまったのだとしたら……後もう一戦、ソードダンサーと戦わなければいけないかもしれない。全くもって厄介な。



「…な、俺達の出る幕なんて無かっただろ?」

「…………」



少し離れた場所に退避していた兵士の一人が、ポカーンと口を開けたまま固まる新人の肩に手を置き、苦笑を浮かべるのであった。



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