過去の罪(6/6) ベルケンド港にタルタロスを停泊させた一向は、ヴァンの動向を探るべく、アッシュと共に研究所へと向かう事となった。 やっと着いたー、とタルタロスから降りたサクが大きく伸びをする中、サクにナタリアが声を掛けて来た。 「導師サクはアッシュと仲が宜しいんですのね」 『教団では、顔を合わせる機会がわりと多かったからね。腐れ縁かも』 六神将の中では、アリエッタの次位によく絡んでたし。その内8割は導師守護役姿の時だけどね。ちなみに一番絡んでたのはシンクです。 アッシュとの距離感を感じているナタリアからしてみれば、彼と親し気に会話をしている私が少し羨ましいのかもしれない。 7年振りの再開だというのに、アッシュのつれない態度に寂しそうにしてたもんね、ナタリア。 『…大丈夫だよ、ナタリア』 「え?」 『アッシュも難しい年頃だからね。今はちょっと素直になれないだけだよ』 そうでなくてもアッシュはナタリア大好きっ子なんだし。アッシュを脳内メーカーで表すと頭の中の大半がナタリアで埋め尽くされる位には。 『もっと自信持って大丈夫だよ。アッシュはナタリアの事を一番大切に想ってるんだから』 「本当にそうでしょうか…」 『そうだよ……っと、すみません』 ナタリアと話していたらドンッ、とフードを被った人物にぶつかり、サクはその人物に謝ってから再びナタリアへと視線を向けた。その時、ナタリアはサクの表情が妙に笑顔である事に気付いた。 『…じゃあ、試してあげようか?』 「え?」 『大変だよアッシュ!ナタリアが…「何!?どうした!!」…反応早ッ!!?』 先頭を歩いていたアッシュが、ナタリアの名前を耳にした瞬間、光の速さで最後尾迄戻って来た。愛の力は偉大だね。 「ナタリアがどうした!?」 『先頭を歩くアッシュの背中がカッコいいって』 「んな…!!?」 「ど、導師サク!!?」 顔が一気に真っ赤になったアッシュとナタリア。おーおー反応が可愛いねぇ。 「そ…、そんなくだらねぇ事で大声を出すんじゃねぇ!!屑がっ!!!」 ガツンッ 『あ痛っ!!』 にやにやしてたらアッシュに拳骨で殴られた。痛い!コレはツッコミのレベルを越えた痛さだよ!! 『酷いよアッシュ〜、何も本気で殴る事無いのに〜』 「うるせぇっ!!自業自得だろうが」 怒りながらジェイド達の所へと戻って行くアッシュを怨めし気に睨み付けてから、もう一度ナタリアを見る。此方もアッシュ同様、耳まで真っ赤になってます。両頬に手を添えて恥ずかしがってて、とても可愛いです。 『とりあえず、納得して貰えたかな?ナタリアに何かあったら本気で心配して物凄い勢いで飛んで来る位、アッシュはナタリアの事を大切に想ってるんだよ』 ナタリアにカッコいいって言われると真っ赤になる位、ね。 「…有り難う、サク」 アッシュのナタリアを大切に想う気持ちはアッシュの行動により実証され、漸く笑顔を見せてくれたナタリアに、サクも満足気な笑顔を浮かべた。ナタリアの恥ずかし気な…けど、幸せそうなナタリアの笑顔を見れて良かった。体を張った甲斐があったよ。まぁ、もっと作戦を練ってれば、他に痛くない方法もあったろうけどね。 早く来ないと置いていくぞ!という不機嫌なアッシュの呼び声にナタリアと顔を見合せて苦笑した後、二人は彼等に追い付く為に再び歩き始めた。 そんなサク達のやり取りを、少し離れた建物の死角から様子を伺う影が一つ。先程サクとぶつかった人物だ。 更に、その人物の傍には他に二人組の人物がいる。 紙を持った人物はサク達が完全に去って行ったのを確認した後、サクとぶつかった時に手にした紙切れを広げ、そこに書かれた内容を確認した。 「…で、サクはなんて?」 「作戦自体に変更は無し……ですが、追加任務で、タルタロスに民間人が二人いるそうなので、我々に保護しておいて欲しいそうです」 二人組の内の一人…クロノの質問に対し、手紙に書かれた内容をフードを被った人物…フレイルが要約する。サクからの途中経過報告に追加任務がある事を知ったクロノは、小さくため息を吐いた。 「またサクは面倒くさい事を……せめて、その二人が"僕らみたいな訳有り"じゃない事を願うけどね」 「クロノ…どうする、ですか?」 クロノの隣で首を傾げたアリエッタの頭を撫でてやりながら、クロノは彼女に問題はないよ、と優しく微笑む。 「良いよ。そっちは僕とアリエッタが引き受ける。導師イオンの"フリ"すれば手っ取り早そうだし」 「フリも何も、元本人じゃないですか」 クロノの悪役染みた台詞に苦笑を溢しながら、フレイルは港に向かう二人を見送った。さて、俺もそろそろサク様を迎えに行くとするか。 ――――――――― 【過去の罪】の章の表舞台(ナタリア、アッシュ、夢主)と舞台裏(フレイル、クロノ、アリエッタ)のやり取り。 夢主はこの後パーティーから抜ける為、ワイヨン巣窟でのアシュナタが見れないので、今の内にアッシュを弄ってアシュナタを堪能している様子(笑 *前 | 戻 | 次#
|