世界一危険なお茶会(5/7)

ローレライ大祭よりも少し時を遡り、ケセドニア北部戦が終わってから数日後に起こった、導師サク襲撃未遂事件。この事件が表沙汰になっていないのは、私が口外しなかったからだ。

同じように彼女から襲撃を受けたであろう髭も、事件を伏して彼女を自身の部下に置いたらしい。此方は原作通りの流れなので、特に驚いたりはしない。

にしても、私のイメージにあったリグレットは冷静沈着で、取り乱す様な事は極めて少ない人物像を描いていたんだけど……。

髭のみならず、まさか私まで襲ってくるとは。ちょっと予想外だった。あの時の彼女の行動は、明らかに冷静さを欠いた行動だったと思う。そうを考えると、兄を討つ為にファブレ邸へ襲撃を仕掛けたティアと、リグレットは似ているのかもしれない。

リグレットに襲われた時に、マルセルの生存を伝える巾か否か一瞬迷ったが……リスクが高いので止めた。私の事を信用していない彼女が、マルセルの生存をヴァンに伝えてしまう可能性は十分ある。何より、ヴァンに弱味を握られたくはない。

襲撃の結末は、我に返った(と思われる)リグレットが逃走してうやむやになってしまったので、機会があればもう一度改めてリグレットと話をしたいな……と思っていた時、アリエッタから一緒にショッピングへ行きたいという何とも可愛らしいお願いをされ、思い付いたのが今回の任務だった訳だ。どうせならリグレットも誘って、コレを機会に皆もっと仲良くなろうよ!と提案したら、アリエッタは笑顔を輝かせて二つ返事で話に乗ってくれた。

リグレットはアリエッタと同じ六神将で、しかも同じ女性である。自分の目的以外にも、アリエッタの為にも此れを機会に二人の交流を深めさせてあげたかった、という狙いがサクにはあったりする。

何にしろ、リグレットには今回の任務で少し無理を命じたのもまた事実だ。正直、彼女にはショッピングを楽しむ余裕はあまり無かっただろうと思われる。もしもの事があれば、責任を問われるのは彼女だし。とはいっても、そうなった場合はヴァンに部下の責任は上司が取るべき、って押し付けるか、私が揉み消すか何らかの対処はしてたけど。

そんな任務中でも、時折リグレットにも笑顔は見られて、アリエッタも喜んでたからまぁ、行って良かったかな、ていうのが個人的な感想。一応少しは話も出来たし。完全にリグレットの中の蟠りが払拭された訳じゃないだろうけど。まぁ、何だかんだで私も結構楽しかったし!

アリエッタとリグレットで着せ替えショーが出来て!!




『ただいまー』

「おかえり」



教団内に宛がわれた自分の部屋に帰ると、執務室の方にシンクがいた。

ひょっとして、帰りを待っててくれたのだろうか。そう思ったら、何だかとても嬉しくなった。



「サクにしては、案外早かったじゃん」

『まぁね。遅くなってリグレットに迷惑が掛かるといけないしさ』



ローレライ大祭の時にテロ騒動があって以来、教団内部は以前よりも若干ピリピリしている状態が続いている。もっとも、ピリピリしているのは主に神託の盾騎士団達の方のみで、モースとか上層部の連中は別に警戒してはいない。理由は簡単。あれ以降、しばらくの間はテロが起こるとは預言に詠まれていないから。思考が単純な上に預言馬鹿過ぎて笑えるね。

ならば、逆に私が預言に詠まれていない騒ぎを起こしたら、果たしてどうなるのか……かなり楽しそうだけど、髭に尻尾を捕まれたくはないから、あくまで今は大人しくしておくけど。



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