隠された真実(12/15)


「お前ら一体……俺に何を……」

「答える義理はないね。…サク、行くよ」

『え?いや、私は行かないよ?』



ルークが小さく呻いたと思ったら、シンクに手首を掴まれた。軽く引っ張られたけど、咄嗟に踏み留まった。



「駄目。サクにはイオンの代わりに一緒に来て貰わないとね」

『……セフィロトの解呪は、誰の命令で動いてるの?』



ほんの少しだけ、声のトーンが落ちたのが、自分でも分かった。アリエッタが、サクの服の裾を掴む。シンクも私が真面目な顔になったのを見て、一瞬身体を強張らせた様だった。



「…極秘任務だから答えられないよ」

『……私、教団の最高指導者の筈なんだけど…』



シンクに話して貰えそうにない事を悟り、サクは仕方なく苦笑する。大詠師モースよりも首席総長よりも偉いんだけどなぁ。一応。

それでも、シンクは答えようとはしなかった。まあ、当然ヴァンに口止めされてるだろう事は、言わずとも分かる。

けど…



『シン―――…っ!』

「「!」」



いち早く気配に気付き、サクが息を飲んだ瞬間だった。突如走り込んできたガイが、剣を抜き打ち、シンクに鋭い攻撃を放った。サクに僅かに遅れてガイに気付いたシンクは、反射的にサクから手を離すと同時に跳躍する。アリエッタは、私にしがみついたまま動かない。

シンクは何とか避ける事に成功するも、その際に懐に入れていた音譜盤が、カラン…という乾いた音を立てて床に落ちた。ガイは、徐にそれを拾い上げると、微かに眉をひそめた。



「しまった!」



シンクは直ぐ様床を蹴ると、音譜盤を取り返そうとガイに攻撃を仕掛けた。しかし、運悪くガイのカウンターが決まり、下から切り上げられた剣の一撃でシンクの仮面が弾け飛んだ。

不味い、と思った時には、既にサクの身体は動いていた。



「……あれ……?お前…」

ブワッ

「「!?」」



二人の間に突如強い風が吹き荒ぶ。あまりの強風にガイは目を開けていられず、思わず腕で顔を庇った。一体何が起きたのかと、突然の事にシンクも驚いたが、ガイの後ろにいた人物と目が合った瞬間、直ぐに理解した。

……サクが、詠唱を破棄した譜術を発動させたのだ。自分を逃がす為に。



「……ちっ」



シンクは小さく舌打ちすると、即座に後退し、仮面を拾った。そのまま、黒いコートの裾を翻して暗闇へと消えて行った。



「ガイ!どうしたの!」



ガイに追い付いてきたアニス達の声が聞こえてたのと同時に、サクはガイに発動者が誰か気付かれる前に素早く譜術の発動を解いた。



『ガイ、大丈夫!?』

「ああ、何とかな……っ!?サク!!」



振り返るなり、ガイの表情が再び強張った。…どうやら私の背中にへばりついているアリエッタの存在に、ガイが気付いたらしい。同じタイミングでアリエッタがビクリと肩を震わせた。

アリエッタに警戒したガイが再び剣を構えようとしたのを見て、サクは慌てガイにストップを掛ける。



『ちょっ、待って!アリエッタに敵意はn…「ああ〜!!根暗ッタ!!!」……』

「アリエッタ、根暗じゃないもん!アニスの意地悪ぅっ!!」



……タイミング悪く、私の言葉はアニスの大きな声に遮られた。どうやら私が人質にされていると勘違いされた様子。ティアも警戒して武器を構えてるし……ああもう!全員本当にちょっと待って!!



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