隠された真実(1/15)

セントビナーでは六神将が街を封鎖していたり、元帥のジェイド坊や発言に内心萌えたり、アニスの置き手紙に苦笑したりした。フーブラス川ではアリエッタの介入もなく、サクサク進む事が出来た。

そして、やって来ましたカイツール!



「証明書も旅券も無くしちゃったんですぅ。通して下さい。お願いしますぅ」

「残念ですが、お通し出来ません」

「……ふみゅぅ〜」



国境付近の検問所にて、アニスがマルクト兵に門前払いを受けていた。アニスの哀願にも全く籠絡しない兵士に、アニスはガックリと肩を落として踵を返す。此方に向かって歩き出しながら、チラリと後ろをもう一度振り返るも、通してくれる気配は無い。お、そろそろくるぞ…



「……月夜ばかりと思うなよ」



黒アニス再び降・臨☆

先程迄の猫なで声とは打って変わり、ドスの効いた低い声。彼女の素を知らない者達のみが固まってしまった中、イオンが笑顔でアニスに声を掛ける。



「アニス。ルークに聞こえちゃいますよ」

「あ"?…!きゃわーんvアニスの王子様v」



…いやいやアニス、そこはまずイオンの心配をしようぜ。導師守護役でしょーが。

イオンの声で漸く此方に気付いたアニスがルークに突進していったのを横目に、思わず苦笑する。



「……女ってこえー」

『私もガイに同感だよ』

「いや、君も女の子だよな…?」



アニスの豹変振りに、女の子が大好きなガイもたじたじ。え?誤解を招くような発言は止めろって?けど此れはガイ本人が言った台詞なんだから良いでしょ。



「ルーク様vご無事で何よりでした〜!もう心配してました〜!」

「こっちも心配してたぜ。魔物と戦ってタルタロスから墜落したって?」

「そうなんです……。アニス、ちょっと怖かった……。……てへへ」

「そうですよね。"ヤローてめーぶっ殺す!"って、悲鳴あげてましたものね」

「イオン様は黙ってて下さい!」

『ブフッ…』

「サク様もっ!!本当に笑い事じゃなかったんですからね!?」



ごめん、アニス。イオンの真似と思い出し笑いをして思わず吹き出しちゃったよ。

じとー、と此方を睨んでくるアニスに苦笑しながらも、軽く謝っておく。実際、大変だったのは本当だろうしね。



「ちゃんと親書だけは守りました!ルーク様v誉めてv」

「ん、ああ、偉いな」

「きゃわんv」



……なんだか、ルークが適当にあしらってる感が否めない。

此処にシンクがいたら、確実に「守護役なら親書じゃなくて導師を守りなよ」とかアニスに言ってそうだな……何となく。



「無事で何よりです」

「はわーv大佐も私のこと心配してくれたんですか?」

「ええ。親書がなくては、話になりませんから」

「大佐って意地悪ですぅ……」



アニスの安否をルーク達が気遣った時ですら、彼女の本性を知る者達は、誰一人として彼女を心配していなかった。曰く「アニスですから」の一言で満場一致する始末だ。勿論サクも賛同側。



「ところで、どうやって検問所を越えますか?私もルークも旅券がありません」

「ここで死ぬ奴にそんなものはいらねぇよ!」



アッシュキター!

ティアの声を遮り、そんな声が頭の上から降ってきた。と同時に、アッシュに奇襲を掛けられたルークが大きく吹き飛び転倒する。

何だよアッシュ。華麗なガイ様の真似がしたかったのかい?……あ、いや、最初に甲板から飛び降りて登場してきたのはアッシュか。…違う!一番最初に頭上から飛び降りて登場してきたのは、ファブレ家の屋敷に侵入してきたティアだ!!!

ルークがとどめを刺されそうだという緊迫した状況下で、そんなどうでも良い事を考えていたサク達の前に、今度はヴァンが現れた。



「退け、アッシュ!」



ヴァンは、まさに間一髪の所でアッシュとルークの間に入り、アッシュの剣を己の剣で受け止めた。

うわぁ、ヴァンが絶妙な立ち位置に回ってくれたからアッシュの顔が見えない。わざとだろうけど、何だろう……何か、損した気分だ。

例えるなら、映画のクライマックスの所で目の前をトイレに行くオッサンに横切られた時の様な苛立ち。



『釈然としない苛立ち……此れが怒り?』

「意味が分かりませんよ、導師サク」



ジェイドにツッコまれた。しかも冷静に。むしろここは一緒にボケて欲しかったなぁ。これじゃあ私痛い子だよ。



「……ヴァン、どけ!」

「どういうつもりだ。私はお前に、こんな命令を下した覚えはない。退け!!」



ヴァンの登場にアッシュは忌々しげに舌打ちすると、その場で身を翻してあっという間に消えてしまった。あんな重装備で……アッシュの足速ぇ〜…。



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