Re birthday

ミトスとの戦いにも、ついに決着が着いた。しかし、クルシスの輝石がある限り、ミトスは生き続ける為、ロイドに討たれても尚、体が再生しようとしていた。

ミトスの輝石と身体が明滅を繰り返す中、そしていずれは輝石に支配される……と、ミトス自身が淡々と語った。

もうお前達の正義ごっこに付き合うのはごめんだ。ミトスは、自身の輝石を壊すようロイドに言った。そうしないと、デリス・カーラーンは離れていくとも。



「―――さよならだ。僕が選ばなかった道の最果てに存在する者」



ミトスにとって、ロイドは自身の影。世界を救おうと奔走するも、結局は世界を変えれず……最愛の姉を失い、全てを諦めた自分と……諦めずに追い続けているロイド。

かつての自身の面影を、ミトスはいつしかロイドと重ねていたのかもしれない。



「僕は僕の世界が欲しかった。だから僕は後悔しない。

僕は何度でもこの選択をする。

この選択を……し続ける」



苦渋の表情で剣を構えたロイドだったが……それは、誰かの手によって制された。ロイドが驚いて顔を上げる。



「現実から逃げるな。ミトス」



ロイドを止めたのは……アシェルだった。



「な……アシェル!?」

「死ぬことが償う事の全てじゃない。生きて、地獄の責め苦を味わうのも違う」

「……じゃあアンタは、僕にどうしろって言うんだ?アシェル」

「お前は……幸せにならなきゃいけないんだ。奪ってしまった人達の未来の分も」



ミトスの瞳が、僅かに瞠目される。アシェルの言葉が意外だったのか、ミトスだけではなく、ロイド達までもが彼と同様に驚いていた。

アシェルの言った言葉は、ロイドがクラトスに向けて言った言葉と……アシェルの親友がアシェルに向けて言った言葉だった。



「無様でも、滑稽でも、どんな形でも良い。生きて、自分のした事の責任を背負い続けるんだ……そして、罪を償える様な努力を重ねるんだ。

少なくとも俺は……そうして生きている。仲間達とも、約束したから」



アシェルの言葉には、重みがあった。全てが彼の経験から語られているから。

ミトスは後悔しないって言ってたけど……本当は、少なからず後悔もしているのだろう。

だからこそ、ミトスはロイドに自身の輝石を壊す様に言った。世界を犠牲にしてでも姉を求める自身を、自分で止められないから。

それが彼の……曲げられない信念であるが故に。



『……私も、アシェルと同じ考えかな。こんな形で、貴方を死なせたくないもの』



アシェルに次いで、サクが彼の前に進み出る。



『だから私は……今からミトスを助けるね』



アシェルからローレライの鍵を受け取り、先程よりマシになったが、未だに身体が透けているミトスに翳した。

目を閉じて意識を集中させながら、アシェルとローレライの鍵を介してこの世界に流れ込む第七音素を、鍵に集めていく。大丈夫……コントロール出来る。



「……何をする気?」

『私を信じて…』



フワリとサクの背に金色の羽根が現れた時、サクはゆっくりと目を開けた。金色に変わった彼女の瞳に、ミトスの輝石が写る。

瞬間、パキン…と輝石が割れると同時に、ミトスの身体が光に包まれる。第七音素の性質は、収束と分解……その性質を利用し、応用させれば、再構築も可能となる。サクがミトスにやった事は、フォミクリーを生物に転用してレプリカを生み出す技術を基盤に、それらを応用した物だ。



「此れは……っ!?」

光が収まった時、そこには身体を再構築されたミトスがいた。



『無機生命体とは違って、限りある命だけど……否、限りある命だからこそ、私は貴方に精一杯生きて欲しい』

「…敵の親玉に情けを掛けて、助けるなんて……馬鹿じゃないの?僕はお前達を認めた訳でもないのに」

「なら、お前が俺達を認めるまで、俺が戦ってやるよ」

『アシェルだけじゃない。私も……皆も付き合うよ。ミトスの気が済むまで』



貴方が別の選択肢を選んでくれるまで、何度でも……私達は諦めない。



「人は、変わる事が出来る。人間も、エルフもハーフエルフも同じだ。

俺が昔の自分から変わる事が出来たんだ。きっと、お前にも出来る」



ルークが過去の自分から変われた様に

アッシュが自身のレプリカを認められた様に

姉の死を乗り越え、罪を償う事がミトスにも出来る筈だ。



「……僕は人間は嫌いだし、僕らが受けた仕打ちも…この汚い世界も許せない」



ミトスの言う様に、確かに世界は理不尽だ。

今まで受け入れられなかったんだから、急に全てを受け入れろとは言わない。無理に世界を許さなくても良い。現実を受け入れるのに、時間が掛かってもいい。

だから…



「だけど……もしお前達が今の世界を変えられるのであれば、その先の未来をお前達と生きてみるのも、悪くはないかもね」

「ミトス、それじゃあ……!」

「ここまでされちゃ、認めざるを得ない。……僕の敗けだ」



泣きながら駆け寄ってくるジーニアスに向けて、ミトスは苦笑していた。そんな彼等の様子を見て、サクとアシェルも互いに笑い合った。彼等を含め、この場に集まった全員が、とても穏やかな表情で。

こうして四千年もの間、同じ選択をし続けてきた彼は……四千年目にして、初めて違う未来の選択肢を選んだ。


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