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俺の周りが何か変だ

何かがおかしい。

任務中、アッシュはそんな違和感を抱いていた。否、正確にはもっと以前から感じていた事なのだが。

現在俺は六神将総出の任務の真っ最中であり、フレスベルグの背に乗って大空を飛行中だ。

今回の任務は、タルタロスの奇襲・及び導師イオンの奪還。預言成熟を企む大詠士モースからの命令に従い、マルクトに誘拐された導師イオンを救出する……というのが建前上の任務。

俺には教えられていないが、その裏でヴァンが計画の為に導師を利用しようとしている事も実は知っている。

しかし、隠されたヴァンの計画も含めたこれらの任務自体に関しては、別段特筆するような問題は無い。前回とも何ら変わり無い流れだからだ。

しかし、それら以外の所で前回との大きな相違点が生じている事が、微妙に問題だったりする。

例えば、この二人。



「アリエッタ、アンタはどんくさいんだから"お友達"の上から落ちない様に気を付けなよね」

「アリエッタどんくさくないもん!シンクの意地悪っ!」



会話だけ聞けば、そこまで違和感は感じない。しかしこの二人、この会話を二人でフレスベルグに相乗りしながら交していたりするから驚きだ。

以前では有り得ない光景。そもそもシンクがアリエッタに積極的に声を掛けてる時点で、色々と有り得ない現状なのだが……



「何でも良いけど、危ないからしっかり捕まってなよ(僕に)」

「シンクもアリエッタを離しちゃ嫌、です!」



屑がっつ!

見ていて苛つく事この上ないバカップル共が!!いつからだ!一体いつからお前達はそんな関係になったんだ!?

何だかんだ言われてもアリエッタは嬉しそうにシンクに身を寄せてやがるし、シンクの奴も何だかんだ言って満更でも無い顔をしてやがるのが余計に腹立つ!仮面を付けてるせいで実際に表情は見えねぇがな!

ちなみに変なのはコイツらだけじゃねえ。もう一人いやがる。



「シンク、アリエッタ、今は任務中だぞ。髭…ではなく閣下の極秘任務でもあるんだ。正直面倒な気持ちは分かるが、任務中は気持ちを切り替えろ。浮わついた気持ちでは、下らない閣下の任務でミスを犯す危険性が高まる」



リグレットも何か変だ。

以前のコイツはヴァンを尊敬し、奴の忠実な副官だった筈だ。それが、現在のコイツの言動の節々にはヴァンの野郎を馬鹿にした発言が含まれていやがる。ヴァンの事を髭などと呼び間違えたりする時点で、尊敬なんて欠片もしてやがらねぇ。

現に、ヴァンの話をする時のコイツの目はいつも座っている。

この間なんか六神将会議の時にヴァンの分だけお茶を配らなかったんだぞ!?しかも「私の分が無いのだが…」って聞いてきたヴァンに対して返した言葉が「閣下にも必要でしたか?」だぞ!!?しかも冷ややかな視線と声で!!あのヴァンが涙目で「いや……いい」とか項垂れていやがったんだぞ!?



「(一体何がどうなってやがる…?いくらなんでも前回と違い過ぎだろ!!)」



明らかに、アッシュが知る"前回"とは何かが違う六神将。唯一前回と変わらないのはラルゴ位だ。ディストに関しては最初から六神将に加わってすらいねぇし(何処に行きやがった)。

しかも……



「何で誰も乗っていやがらねぇんだよ屑があああああ!!!」



空から奇襲をかけて艦内に突入したのは良いが、何故か既に裳抜けの空な軍艦タルタロスを前に、ルーク達と同様に逆行していたアッシュの混乱の極みの末に上げられた怒声が虚しく木霊したのであった。


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