目的 第十三階層カグツチにSS級の犯罪者が現れるとの情報を得て彼もまたそこに向かっていた。 咎追いとして、ある目的の為に彼、マウタはカグツチに現れた。 賑やかなオリエントタウン。人ごみに紛れて彼は歩いていた、ただ今は意味もなくその辺をふらついていた。 ここは自分には合わない。彼にとってはこの耳鳴りは雑音に過ぎない、煩くて仕方がなかった。 「カグツチか…ここにあいつがいるんだな」 彼が想ってる人物がここにいる。会いたくて仕方ないが今はその時期ではないと思い彼はフードを深く被り顔を隠すようにした。 想い人は何処にいるだろう。がやがやと賑わうオリエントタウンを通り過ぎ、人気が少ない場所を探し一枚の紙切れを出す。 そこに書かれてるのは今回ここに来た目的とやらなければならい事が書かれてある。 「紙切れ一枚で世界が変わるとは思わない、だがこれも運命なのか…」 溜め息を吐きながら歩く。 気がつくとカグツチの下層に築かれた浪人街まで足を進めていた。強い風でフードが剥がれ、無造作にも髪を乱す。 情報によるとここは二年前統制機構に制圧されたイカルガ連邦の様式に似ていた。だが彼にとってはそんなことはどうでもよかった。 人影がなく静かだ。だがここは静か過ぎて何かがおかしい。 「(静かすぎる…何かに怯え憎悪してるか。くだらない)」 干渉せずどうでもよさそうにマウタはこの場から立ち去ろうとした時だった、この付近から戦う音が聞こえた。 この静けさの理由が少しわかった。彼はどうなってるのか少し気になり音がする方へと足を動かす。 音が聞こえた所に人影が数人、気づかれる前に裏道に入り様子を見る。 「(統制機構と…イカルガの忍者か。ってこいつ確かイカルガの英雄でキサラギ家の次期当主か)」 青い服の青年に見覚えがあった。 過去に何度か見たことがあったためマウタは覚えていた。彼がセンヅキ家に来て間もない頃に何度か顔を合わしていた。 未だに覚えているんだなと過去に思い浸りながら観ていた。 戦いが終わり何処かへ行ってしまう彼の後を追う。意味は特になかった。 気づかれるか気づかれないかの気配で後を追う。彼も気づいているはずだ。マウタはゆっくりと後ろからついて行く。 細い道を曲がりマウタも曲がろうとした時だった、空を切る音がマウタの目の前で聞こえる。 切られる寸前でマウタは避けたのだ。一歩間違えれば怪我をするところだった。 「貴様、さっきから僕の後をついてきて…誰だ」 「…少し聞きたいことがあって後を追ってただけだ。イカルガの英雄よ」 「貴様は僕のことを知ってるようだな。何者だ…」 「マウタ=センヅキ」 何も気にせずに名乗る。彼は少し驚いた表情でマウタを見る。流石にあっさりと名乗ると思わなかったため驚きの表情が隠せないらしい。 「セレン=マヒナはここに居るのか?」 無表情のままマウタは問う。彼も無言で何も答えようとはしない。当然マウタもここで引き下がるわけに行かなかった。 溜め息を吐き、もう一度同じ言葉を吐き出すように言う。 「セレン=マヒナはここに居るのか?」 同じ言葉をもう一度発し一歩進む。 彼も身の危険を感じながら刀の柄を握り警戒をする。だがマウタは優しく微笑み彼の握っている上から手を当て抜けないようにする。 一瞬の事だった。二人の間は十分に空いていた、それをマウタが一瞬のでき事のように近づき今彼の目の前にいる。 そしてマウタの笑みは感情が無くただ仮面をつけたかのような笑みだった。それが何処か狂気じみて何処か見覚えがある笑でもあった。 「悪いな、貴重な時間を割いてしまい…また会えたら会おう」 そう言いマウタは何事もなくこの場を立ち去った。 ――世界は常に平等で不平等で矛盾を作り上げそれを正しいと勘違いし続け歯車は回り続けるんだ。 ――理に反した者には粛清を、お前はそれを正す者だ そんな声が小さい頃からずっと聞こえていた。もう何百、何千と聞き飽きた言葉だ。 また聞こえる。最近はその程度しかに感じない、もうどうでもいい事だ。 「ふふっお目当ての子には会えたかい?」 頭上から凛とした声が聞こえた。そこにいるのは幽霊みたいに透けている少女だ。 黒い髪を風に揺らし黒い衣服。全体的に黒い少女の赤い瞳に魅入られそうにじっと見つめているマウタにくすりと微笑む。 その笑はまるで自分の子のように優しくまるで母親のよう見たいな雰囲気を出し、何処か安心感を抱く。彼の頬をそっと触れようとする。 だがその手は空を描き彼の頬をすり抜ける。すり抜けた手は少し物欲しそうに開いたり閉じたりする。 「実体があれば君に触れられるんだけどね」 「で、何しに来た」 「そんなつまらないこと言わないでくれるかい?簡単に言えば実体化してフラフラしてたら君にあったんだよ」 「………」 「嘘じゃないさ、やっと動けるようになったんだからね。私は行くよ」 ふらりと消えていく彼女を鋭い目つきで睨みぽつりと呟く。彼女は言葉は聞き取れなかったが言いたい事は分かっていた。 嘲笑うかのように笑い彼女は消えた。 完全に消えるのを見届けるとマウタも歩き出す。彼もここに来た目的はちゃんとある。 ここに来て向かう場所は既に決まっていた。それが当たり前かのように繰り返されるかのように目的地へと向かい出す。 . |