後輩








ポートでセレンとハザマと別れた後ミズキとノエルはカグツチの街の下層へと進んでいた。

上から下に行けば行くほど雑へとなっていく。未完成な都市なんだなと思いながら足を進めた。


「裕福な人間や権力がある奴は全て上に住んでるのか…くそ胸糞悪いな」

「ミズキ君?」

「いや、別に何でもない」


ミズキの独り言はノエルには聞こえなかったらしい。

彼の言ったとおり裕福な人や権力がある人は上の階層、その他の人は下へと追いやられていた。ミズキはそれが許せなかった。

だが階層ごとに見られる街並みは少し好きっていう矛盾を思いながらノエルの一歩前へと歩いた。

今二人が居るのはちょうどカグツチの中腹辺りの階層だ。そこで情報を集め、少佐の姿を探しながら歩いていた。


「見つからないね…」

「そう簡単に見つかると思うか?」

「そうだよね…」


少し落ち込むノエルを慰めるように頭を撫でた。

今回の任務と何故少佐が消えたのかをずっと考えていた。セレンだったら何か知ってるかもしれない、いかにも前にもそんな事があったかのように感じた。

セレンに聞きたいのは山々だが自分も任務がある。だからさっさと事を済まして彼女に聞こう。

ノエルの隣を歩きながらもう一つ大事な事を思い出した。


「なぁもしかしてラグナ=ザ=ブラットエッジに遭遇するんじゃね?」

「あ、確かに。もし見かけちゃったらどうしよう…やっぱ捕まえなきゃまずいかな?」

「だな。とりあえず俺ら二人で捕まえられるかが問題だけどな」

「そうだよね」


二人は苦笑いしながら目を合わせ溜め息を吐いた。マイナス思考な考えをやめて前向きに考えようとする。

だが本心は会いたくない。会わずに事を終わらせればいいなと思う。





「あのー」

「ん…おっ?」

「もしかしてミズキ=シルヴルさんとノエル=ヴァーミリオンさん…ですよね?」


後ろを振り返ると大きな眼鏡と上品な雰囲気が特徴的な、まだ若い少年だ。しかもその少年はどこかで見たことがあった。


「やっぱりミズキ先輩とノエル先輩だ」

「先輩って貴方もしかしてカルル君!?」

「カルルって後輩のカルル?」


カルル=クローバー。ノエルとミズキが士官学校に通っていた頃、同学校の初等部に通学していた少年だ。

と言ってもミズキは指で数えるぐらいしか会わず、殆どがセレンの情報で知っているだけだ。

ノエルは懐かしい顔だがあまり関わりがないミズキにとってはどうでもよかった。




二人が過去の話をしてる間ミズキはそれを静かに聞いていた。否、聞くふりをしていた。

ふとカルルの後ろにいる巨大な人形に目がいった。あまりに物騒な姿をした人形を指を指して問う。


「おいカルル、それどうした」

「それって酷いですね。姉さん≠ナすよ」

「姉さん?」

「はい。僕の姉のエイダです。……姉さん、この人達は士官学校に通ってた時にお世話になった先輩なんだ」


彼は当たり前かのような自然さで人形に語りかける。ミズキは気味悪そうにそれを観ていた。

その瞳には感情が無くただそれを観ていた。確かにその光景は気味が悪いがそうなのは彼にとってはどうでもよかった。

嫌な感じがする人形。ふと、その人形の事を思い出す。


「ニルヴァーナ…」

「…!ミズキ先輩、今なんて言いましたか」

「なるほど、そういう事らしいな。で、どうするんだ…あっそならいいんだ」


ぽつりと何かを呟くが二人には聞こえてないらしい。にやりと笑い腰にある剣を抜き出した。


「あーいいよ。どうせお前俺らにラグナ=ザ=ブラットエッジの情報聞き出そうと思ってたんだろ」

「話が早いですね、ミズキ先輩。だったら知ってる事を教えてもらいましょうか」

「流石咎追いってところか?ほらノエルは下がってろ」


何処かやる気がなさそうに言うミズキ。剣を片手で握りノエルを守るように前に出る。


「あ、別に戦う理由が情報ってわけじゃないんだ。ちょっと後ろのそれが不気味すぎてな」

「姉さんに何て事を…!」

「戦ってもいいんだけど…って戦えたらの話か」

「……何……っ!?」


カルルと人形の周りに眩い光が放たれる。一瞬何が起きたか分からない二人にミズキは笑う。

カルルに見せた笑が恐怖を与えた。


「悪いけど無駄な戦いはしたくない主義だからそこで大人しくしてろよ」

「ま、待て!」

「大丈夫俺らがどっか行ったらそれ消えるから。行こうかノエル」


ミズキはノエルの手を取りこの場から立ち去った。


「待ってミズキ君!カルル君放っておいていいの?」

「大丈夫だってあれは単なる時間稼ぎなだけのやつだし…それと、いや、なんでもねぇ」

「ミズキ君?」



カルルから少し離れた場所で立ち止まる。ミズキが急に立ち止まったためノエルは彼の背中にぶつかってしまった。

どうしたんだろうと彼を見るがその顔は怒りが見えていた。



怒りを通り越して憎悪がます。どうして、どうして自分の目の前に奴がいるんだろうと疑問に思ったがそんなのはどうでもいい。




「久しいな…マウタ」

「…ミズキか。まさかこんな所で会うとは…だとしたらセレンもここに居るのか」

「答えるわけねーだろ。誰がお前なんかに」


マウタと呼ばれた青年は溜め息をしながら仕方ないと刀を突き出す。ミズキも警戒しながらノエルを庇うように前に立つ。


「で、何しにここに来た」

「簡単な話だ、咎追いでここに来たって言えばわかるだろ」

「なるほどお前も咎追いと同じ目的か」

「それもあるがセレンがここにいると思うから会うことにしよう」

「ざけんな、俺達を見捨てた奴が何言ってるんだ」


さらに不機嫌になるミズキ。マウタもそんな事関係ないような顔をしながらミズキを見ていた。

ふと彼はミズキの後ろにいる少女を見る。

なるほどとぽつりと呟き刀をしまう。


「おいミズキ。その少女命懸けで守れよ…」

「は、何言って…」

「なんでもだ。お前の命をかけて守れよ。じゃないと…」


そう言って何事もなかったように立ち去っていった。

ノエルは何がなんだかわからなくミズキを伺うがミズキは黙り込んでマウタが立ち去った場所をずっと見ていた。



「くそっ意味がわかんねーよ」







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