(静←臨/臨也視点/片想い/切なめ/不器用な二人の恋愛事情の前の話)
「はぁー…今回の仕事はさすがに疲れたな…。」
情報屋としての仕事を終え帰宅した俺は、ぐったりとお気に入りのソファーにもたれかかった。
もう三日ほど寝ていない。日々変わっていく情報に追われ、忙しすぎて寝る暇などなかったのだ。
「こんな日はシズちゃんに癒されるに限る…。」
俺はそう呟くと、おもむろに携帯を取り出した。
「……あぁ。今日も最高にカッコいいよ…。シズちゃん…。」
待受画面には、今日たまたま見かけたシズちゃんを細心の注意を払いながら追いかけ、気付かれないようにこっそりと撮影した画像が映し出されていた。
田中トムと一緒に歩くシズちゃんは、珍しく機嫌が良くて、あどけなく笑っていた。
その笑顔があまりにも優しくて穏やかで、俺はどうしようもなく切なくなったんだ。
その笑顔が俺に向けられることは絶対にないと分かっていたから。
「俺にはこんな顔みせたことないのにね…。」
声に出して言ってみたら、ますます悲しくなって涙が込み上げてきた。
「……なに泣いてんだろ…俺…。そうとう疲れてるな…。」
頬を伝う温かい感触が胸を締めつける。
俺はそっと携帯を閉じると、天井を見上げた。
何もない真っ暗な闇がそこにあった。
まるで今の俺みたいだ。
俺は自嘲気味にそう思いながら、また泣いた。
今だけはどうか君を想うことを許して欲しい。
「シズちゃん…大好きだよ…。」