教えて。
朝遅刻ギリギリで学校に来て、授業をのんべんだらりと受けて、お昼休みには中庭の日陰で寝てたまに寝過ごして、放課後になって家に帰る。
そんな私のぼっちライフに、関わってくる人奴が居る。それが花宮真である。

私の自習の時間の過ごし方は、教室を抜け出して図書室で寝ることがほとんどである。
司書の先生は大抵準備室に引きこもっていて、騒がない限りはあまり注意されない。
そんな静かな図書室に、椅子を軽く引きずる音が鳴る。もう聞きなれた音だ。
しかし、聞きなれたとはいっても何も言わないのは癪に障る。
だから私は、毎回同じ言葉を繰り返す。・・・思いが零れないように、冷たい声で。


「・・・なに。」


△▽


私達の出会いは此処、図書室だった。
学年の有名人である花宮真は見たことがあった。
いつも多くの友達に囲まれていて、先生からの信頼も厚い。
しかし私にはそんな事関係なく、関わりを持つことなく生活していた。
そんな彼と初めて話したのは、2年生になり、同じクラスになってからだった。
今まで寝ているときに人が来たことは無かったので、突然ドアの開く音がしたときは、驚いて花宮を凝視してしまった。


「・・・えっと、苗字さんだよね。」
「そう、だけど。」
「図書室、俺もいいかな?」
「・・・勝手にすれば。」


勝手にすればとは言ったものの、目の前の椅子に座った時には驚いた。
広い図書室なんだから、もっと違う場所があっただろう。
そう思う気持ちを込めてじろりと睨めば、にこりと笑顔で返されてしまった。
これ以上睨んでも意味は無いと思い再び机に突っ伏すれば、本をめくる音以外は聴こえない、静かな図書館の雰囲気が眠気を誘った。


△▽


「・・・夢、か。」


意識が浮上し、伏せていた顔をゆっくりあげると、本を読む花宮がいた。
ふわぁ・・・と小さな欠伸を漏らせば、くすくすと聞こえる笑い声。


「苗字さん、眠そうだね。」
「・・・今まで寝てたから。」
「うん、でももうそろそろ授業終わるよ。じゃあ、またね。」


にこりと微笑むそいつの表情にいらっとする。
チッと軽く舌打ちをすると聞こえたようで、歩き出そうとしていた花宮がくるっと振り返る。


「ひどいなぁ、舌打ちなんて。」


嫌な顔せず笑う花宮。
いつもと同じ顔で。
・・・周りの友達に向けるような笑顔で、私を見る。
・・・・・・その笑顔が嫌いだ。


「・・・いつも、同じ顔。」
「え?」


ふと、言うはずのなかった言葉が零れ出た。
ぱっと両手で口を塞ぐけど、その言葉が戻ってくることは無い。
ちら、と花宮真を見ると、黒い笑みを浮かべていた。


「へぇ? 気付いて無いと思ってたんだけどなぁ。」
「・・・最初から分かってたし。」
「ふは、そんなのあの妖怪以来だ。」
「妖怪・・・?」
「まぁいい。お前、バスケ部のマネージャーやれ。」
「絶対嫌。・・・関わらないで。」


言葉で突き放して、また腕に顔をうずめる。
少し経つと、ドアの方に歩いていく足音が聞こえた。
がら、とドアが開いて閉まる音を聞き遂げて、私は顔を上げた。
と、そこには至近距離に花宮真の顔が。


「・・・っ! な、なんで、居るの。出て行ったんじゃ、」
「ただドアを開け閉めしただけだぜ? お前が勝手に出て行ったと思ったんだろ。」
「・・・腹黒。」
「なんとでも言え。」
「顔近い。変態。」
「うっせぇ黙れ。」
「・・・花宮真、頭良いんでしょ。教えて。・・・あんたが居ると、調子が狂う。いつもの私が、壊れる。ねぇ、これなに。分かんないよ。」


そこまで言ったとき、花宮に目尻を指で拭われて自分が涙をこぼしている事に気が付く。
ぐしぐしと目を擦ると、手首を掴んで止められた。
そのまま目を合わせると、楽しそうに笑って言ったんだ。


「教えてやるよ、そのキモチ。だから、俺に付いて来い。」


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bkm

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