01

すみれ色の姫君でした。
優しい優しい、姫君。
誰よりも人を愛した姫君でした。

それゆえに、自分が傷つこうとも構わないのです。





この出会いがなければ…
そう思うことはあっても、口に出すことはしないのです。
私は・・・いいんです。笑って許せてしまうのです。
そうして自分の居場所を捨ててしまうのです。
それを今さら後悔したところで、何にもならない…。

そうして、寂しげに、また古い写真を見て笑うのです。




体がだるく少しボーっとしてしまうのは、なんなのか。

全国大会が終わって1ヶ月。
あの羞恥といえる雑誌が発売された期間が終わってホッとしていたら直後これとは・・・何かの呪いかと思ってしまう。
彼は人気だから、女性の方から恨まれることにはなれてはいるけれど。


『しかたありませんね・・・』


朝の練習が始まるまで約45分。今から向かえば20分余裕でつく。
でしたら、10分。
鞄の中から雅治君からいただいた変装するために使う化粧ポーチを出した。


「辛かったらすぐに帰ってくるのよ。」
『はい、では行ってきます』


本当はいけないとわかっている化粧を軽くして、いつもどうりに家を出る。
それにしても・・・


『(今日はなにか嫌なことがありそうですね・・・)』


少し不安で、それの原因はすぐ分かることになってしまった。
いつもより1本早い電車に乗って、学校への道のりへと歩く。

どうして一本早いかといえば、この時間帯は部活動をやっている人でもなかなか鉢合う生徒が少ないから。

そう考えて、少し早足に歩いていれば「秘歌理か?」と後ろからかけられたよく聞く声に振り返る。
案の定そこには我らが副部長である真田弦一郎君と見たこともない女性がいた


『おはようございます、弦一郎君。そちらの方は…?』


いつもどうり挨拶をして、それから視線を彼女に移す。
私とは違う、かなり無駄に…と言ってはきっと失礼でしょうが、長い甘栗色の髪。
それを頭の高いところで結んでいるがそれでも腰当たりまで長さはあるでしょう。
瞳も同じ色で、私を映しているけれど映しているようでそうでなく、まるで鏡のような、虚像を見ているように光はない


「こいつは俺の親戚だ。名を棗 魅春という。こいつの両親はつい先日飛行機事故でな。俺の祖父と一番仲の良かった家族で、負担がないようにとうちで引き取った」


すまないがよくしてやってくれ。

と、彼が最後につけたしたのは彼なりの優しさだ。
弦一郎君と並ぶと兄弟には見えないが仲が良かったということは幼馴染のような関係なのでしょう。


『そうですか、棗さんというのですね。私は柳生です。我らがテニス部時期部長幸村精市君と同じクラス、そして弦一郎君とは同じ委員会をしています。』


弦一郎君の言葉に静かに私は笑顔をつくり、そして言葉を紡いだ。
彼のように優しくはできないかもしれないけれど、あくまで私は淑女であるから。

けれど一方の彼女は、弦一郎君の制服を掴み私から目をそらした。


『(失礼きわまりませんね)』


目を見て話さない、というのは個人的にルール違反。
しかし、私も今はあまりここに長居はしていたくないと感じてしまうのは、生理的に彼女が無理だからでしょうか。

男に頼りたくない。
そんな風に思っている私に撮って彼女は正反対だと、直感的に感じてしまう。
別にきつい香水をかけているわけでもドハデなメイクをしているわけではないのだけれど。


『弦一郎君、私は先に着替えなければいけないので失礼しますよ?』
「ん?あぁそうだな。」
『では、棗さんも失礼しますね』


いつもどうりに振る舞い、走り出す。弦一郎君は気付かなかった。
まぁ、おなじ委員会である私が化粧などするわけないと思っていますからね。

化粧をしていることがばれなくて良かったです。



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