ずっと見ていた。彼女が自分の特別になった
あぁだが、お前が好きだとこの気持ちを伝えてしまったら当たり前だが、この関係が壊れる気がした。
それがひどく、恐ろしかったのだろう。


『蓮二君、これなのですが・・・』


オレは変わった。と、よく回りに言われる
自分でもうすうす気がついていたが理由は目の前のこの少女だろう。否、彼女の前で少女といえばきっと「私は淑女です」と改められるだろうが。いかせん、彼女は努力家だ。
それは俺だけではない、回りが知っている。
だからこそ、彼女は認められて俺たちと同じ舞台にたっている。


『蓮二君?』
「いや、なんでもない、少し考え事をな」
『珍しいですね。』
「オレだって考え事をするさ。で、なんだ。」
『これです』


差し出されたのは関東で、対青学の時の対戦結果だった。
オレの負けてしまった試合だ。それに少しイラッとしてしまったのは仕方ないだろう。まさか貞治に負けるとはおもわなかったのだから。


『次の試合は負けられません。きっと、青学はまた全国で上がってくる。今回の敗因は私たちの「余裕」です。ですから』


秘歌理の考えることは本当に面白く誰よりも的を得ていると常々思う。
けれど、結局俺たちは肝心なところで負けた。
全国の結果は関東と同じ準決勝。秘歌理に示しがつかなかった。あいつは試合に出てなかったからだ。


『蓮二君、お疲れ様です』


精市も負け、俺たちの夏は終わった。精市に話しかけ、抱きついてきた赤也を撫でながらオレに視線を向ける


『どうやら、いろいろとこれから改善点はありそうですね。』


それからそう言った。そうだ、秘歌理は…


『今は負けてしまいました。けれど、必ず勝ちましょう、私たちなら出来ます。』


立ち止まることを知らない。


「全く・・・お前という奴は・・・」
『とにかく、今は赤也君が暴走しないようにするトレーニングですね。がんばりましょうか、赤也君』
「・・ッス」


ワシャッと抱きついている赤也の頭を撫でつつ俺に言う。今日のようなことがもうあってはいけない。なにより、誰かを傷つけるたびに傷つくのが赤也だと心の優しい秘歌理はそれを危惧している。




『私たちが、ですか?』


季節は巡り、春。
卒業し、初のミクスドの大会。秘歌理と仁王がペアを組み、そして試合をした。今回でたのは秘歌理と仁王、弦一郎と女子テニ部長だ。本来3ペアでて良かったのだが、女子テニから選抜するにはレベルの差が激しく、足手まといになりかねないと2ペア

その考えは見事に当たり、決勝の弦一郎のペアはお互い足を引っ張っていたからな。

そして決勝は秘歌理たちの勝利だった。その後、だ。
U-17。俺たちにとって中学3年最後の記憶に残る、その舞台。そして、そこでであった斉藤コーチにせまられている二人。

驚いたが、こちらに戻ってくるときは仁王は俺に、秘歌理は精市に化けてきた。きっと、取材除けだと思うが・・・。ここにきて斉藤コーチにあうと思わなかったのだろう

驚きを隠せていなかったようだ。
何せ、あの場所はおおよそ高校一年で選抜に選ばれることがほぼないような場所だ。
けれど、前年度参加した合宿で俺たちのレベルは格段に上がっているだろう。
そのなかでもダブルスと言う他者と共に戦わねばならないそれは、シングルスよりもより難しいもののように俺は思う。


「そう、君たちをU-17のダブルスのペアに推薦したくてね。 どう?」


だからこそのその誘いだった。
去年の高校3年が・・・というよりも俺たちが倒してバッジを手にしてしまったからな、メンバーが足りないらしい。


「オレは断る。」
『申し訳ありませんが私もお断りします』


けれど、二人は断った。俺たちを見てもう一度斉藤コーチを見て


「『私たち(俺たち)は立海で三連覇をする約束をしましたから(したんでのぅ)』」


そう言って笑ったそれにホッとしたのと、秘歌理と仁王がそういう「関係」なのが、どうも溝に落ちなかった





オレのデータに間違いはない。それは、間違いなくはっきりと断言できる。
けれど、これだけは間違っていて欲しかった。


『私が言ったのは、新しくできた植物園に付き合って欲しい。』
「俺がいったんは、秘歌理とどこかに出かけたい。だったんじゃ」
「どっちもおんなじだろぃ!!!」
『「そうですか?/そうじゃろか?」』
「だー!!いきぴったりじゃねぇか!」


それは、秘歌理と仁王が付き合っている、ということ
このことを知ったのは、中三の卒業式。

少しずつ変わっていく中で、秘歌理と仁王はずっと一緒に居た。しまいにはダブルスの境地「シンクロ」をきめ、相手を瞬殺。お互いがお互いを思いあっている。
俺にはできない。羨ましい限りだった。

秋のミクスドも、二人が一緒に出ることは明らかだった。
理由は簡単だ。


「もうすぐミクスドじゃけ、また一緒に組もうな」
『えぇ、』


二人の会話。だが、秘歌理は柔らかく微笑んでいて、オレにはとうてい、邪魔できない。オレはその笑顔を壊したくない、
そう思ってそして、後悔した。


変わったのは…弦一郎の親戚である棗魅春が来てからだ。

丁度そのとき、秘歌理は風邪をこじらせ、学校には来ていなかった。その些細なうちに世界は逆転したんだと思う。
秘歌理にとっても、俺たちにとっても。そして、だんだんとおかしくなっていく。


『っ私をテニス部に勧誘したのは仁王君ですよ。』
「あぁ」
『嘘を…言わないで…っ』


秘歌理が部活に復帰し、そして、ミクスドのペアが変更した件について話して、こうなった。ハーフレンズの奥の瞳がわずかに揺れる。


『いくら蓮二君でもっハルを悪く言うことは絶対に許さない!!』


そして、部内では絶対に言わない「ハル」と、仁王を呼び滅多に見せない涙を流した。


元仲間の思い。


その後、秘歌理は自ら身を引いて、そして、俺とペアを組んだ。
ミクスドの決勝。彼女はいつものプレーとは程遠い、少し、「ある奴」に似たプレーをした。
目の前に居る、銀。
お前は、どうしてそうも自分に臆病になる。


「秘歌理」
『はい?』
「・・・オレがお前に好意を寄せていると言ったらどうする」
『・・・私は、もう人を愛すことはしません。きっと、この先、もう、誰も愛せませんから。その気持ちだけいただきます、「蓮二」』


これが、俺と彼女の最後の会話だった



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