『えっと・・・丸井君であっていますか?』


第一印象は固いやつ
第二印象はがんばってる奴





「オレのこと、丸井じゃなくてブン太でいいぜぃ」
『はい?』


誰もいない教室で日誌を書いている彼女にそう言った。自分でも驚いた。なんでこんなこと言ってんだろうって。
きょとんっと日誌から視線を外したこの優等生は心底理解できていないようだ。
二年になってテニス部に入った秘歌理は今や幸村君や柳たちと打ち合わせしてたり赤也を試合で負かしたりしてる。


『いきなりどうしたのですか、丸井君』


なんて小首をかしげてそう俺に聞いた。
こいつ、やっぱ通用しねぇかー他の女子なら喜ぶけどなーなんて思うけど、他の女子と違うもんなーって。


「俺ら仲間だろ?だったら苗字より名前でよんだっていいと思うんだよな。」


まぁ、とりあえず理屈を並べてみるそうすれば柳生は少しはにかんで


『そう…ですね…では改めてよろしくお願いしますブン太君』
「ブン太!!呼び捨て!絶対!!!」
『それは出来ませんよ、ブン太君』


つーっか余計歯がゆくなった。うわ、うわ、背筋がゾクゾクする。
って言うか、君付けとか本気で慣れないことにぞわぞわして顔がひきつってたんじゃないかって思う。


『ほら、そろそろ部活が始まります。』


でも、や・・・秘歌理に言われて先に部室にいくことにした。あーぁ甘く見てたぜ優等生。


「(でも、ま一歩前進手感じだな)」


って、そう思っていた矢先だった。






「ブン太、どうしたのですか」
「!?」


廊下で仁王と共に歩いていた秘歌理がオレを呼び捨てで呼んだ。
隣に居る仁王がめっちゃくちゃ驚いていたけど、俺は逆にメチャクチャ嬉しくなったのは言うまでもないんだが。


「やぁっと呼んでくれたな!秘歌理!」


勢い余って秘歌理に抱きつこうとした。
だが、その前に『人の顔のときに勝手なことをしないでいただけますか。』と、抱きつこうとした人間の髪の毛が滑り落ちた。
ぎょっとして目の前に居る銀と、横に居る銀を見る。

にやにやとした秘歌理にそっくりなやつと、むすっとした表情の仁王。
は?はい?


「うわあぁぁああ!!におうがふたリィ!?」
『ブン太君うるさいですよ。』


声を荒げればため息をついたもう一人の銀が消えて、見慣れたすみれ色が現れる。
そしてそのまま横にいた銀色から眼鏡を奪い取ればそれを自分でかけていた。

は?


「に、仁王が・・・秘歌理?」
『入れ替わりです。私がホンモノです』
「プリ」
『うるさいですね、尻尾抜きますよ。』
「「!?」」


その日一日秘歌理の機嫌はメチャクチャ悪かった。
あっちなみにコレも中2のときの話しだぜぃ。



あれから月日は流れて、俺らは中3。関東でも準優勝。全国でも準優勝。
そして、今日は


『皆さん、私を男子テニス部に誘っていただいて、本当にありがとうございました。』


卒業式。
まじで3年間なんてあっという間で、俺たちは身長も伸びたし、体つきも変わったし、やっぱそういう年頃って訳で秘歌理も卒業が近づくにつれ、男子テニス部の練習がなくなるにつれ段々と俺らから距離を取り始めていた気がする。


「何言ってんだよぃ、逆だろ、ぎゃーく」
「うん、そうだね、秘歌理」
「秘歌理は高校でも続けるんじゃろ?テニス」


俺らの思うとこもいろいろ、秘歌理は内部進学したし、っていうか俺ら全員テニス推薦の内部進学だし、なにより、テニスがうまいからそう思っていた。

そうすれば秘歌理は苦笑いして『えぇ、続けます。次こそ、3連覇果たしましょうね』といった。

空は青く、ずっとずっと澄み切っていた

間のおもい。

(ずっとずっと続くと思っていた)



いまさら後悔したって遅いって気がついたのは


「秘歌理が・・・テニス部・・・やめた・・・?」


幸村君から聞いたときだった

ごめん。
あんなことする奴じゃないって、分かってたはずなのに、俺は知っていたはずなのに




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