元
俺と先輩が初めてあったのはオレが入学してすぐのことで真田副部長、幸村部長、そして柳先輩に負けた俺。
そんなオレに最初にかけてくれた言葉は
『大丈夫、誰しも最初から強いわけではないんですよ』
その一言で
「先輩っ俺・・っ」
『はい。』
「一人になるの・・・っいやっすよぉ」
先輩達が卒業するギリギリまで一番、彼女にすがっていた。
『ここは「〜になりたい」なので「I wont to be」を使うんです。』
「じゃあ、オレがテニスプレイヤーになりたいは、えっと・・・あいうぉんととゅーびー あ テニスプレイヤー・・てことっすか」
『えぇ、そうですよ。』
先輩は頭がいい。
お世辞とかじゃなくて、真面目に。オレがどこまで理解してるかちゃんと聞いてるし、わかんなかったら1から10まで全部教えてくれるしはっきり言って教師よりも分かりやすいんじゃないかってそうとすらおもう。
まぁ、一対一だからっていうのもあるのかもしれないけど。
『弦一郎君、一年生のメニューなのですが・・・』
神の子・幸村精市
皇帝・真田弦一郎
達人・柳蓮二
そして、淑女・柳生秘歌理
そういわれるほど先輩はすごいんだ。
中学テニス界で知らない人はいないといわれる4人は四天王だなんて別名で呼ばれてて、そんな先輩たちを持てたことが誇りだし、俺もその一人になれたらって思う。負けなしの強さを誇っている、オレの憧れ
『・・・赤也君、手が止まっていますよ』
「はっはい!うわぁ」
『・・・』
だから少しでも先輩の手伝いをしたいと思って部活開始時かんまでマネの仕事を手伝っていたのに、気を抜いてしまった。
サッとオレをよける秘歌理先輩。理由はオレがドリンクをぶちまけたからだ。んで、オレはドリンクを被り、秘歌理先輩はそれをかわした、というわけだ。
『・・・赤也君・・・』
「すいませんっ」
怒られるってそう思ったが、俺にかけられたのは大きめのタオルだった。ふわりと柔軟剤の臭いに包まれた。驚いて秘歌理先輩を見れば苦笑いしていて
『早くシャワー室に行きなさい、新人戦はもうすぐですし、背伸びはしなくていいんです、自分のペースで歩いていいんですよ。』
いつも、先輩はみんなの事を見てて、笑っているんだ。
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負けた。
目の前が真っ暗になった。ってゲームオーバーのときによく言う言葉だけど、本当にそうなんだってそう思った。
柳先輩と一緒だったから、勝てた。だけど、結局俺たちは総合的には負けたんだ。
『皆さん、お疲れ様でした。』
なのに、先輩は微笑んで俺たちを迎えてくれた。泣いていたけれど、微笑んでいた。
試合にすら出れなかったのに、俺たちに勝利を任せてくれたのに、恨んでくれたってよかったのに。
『とてもいい試合でしたよ。私は、悔いなんて残っていません。皆さんの試合を見れたんですから』
あぁ、その一言一言に救われる。思わず秘歌理先輩に抱きついたけれど、いやがることもなく、抱き締め返してくれた。
「秘歌理先輩ぃっっ」
『はい、なんですか、赤也君』
「おれっ おれぇ」
ボロボロと涙が止まらない
情けない姿だってそう思われるかもしれない、それでも、悔しい。秘歌理先輩の手に、優勝旗を持たせてあげたかった。
『・・・赤也部長。』
「!」
いつも、いつも優しく言うだけだった秘歌理先輩の声色が少し変わって、オレは驚いて顔を上げた。そんなオレに、微笑み、ごしごしとどこから出したのかハンカチでオレの涙を拭く。
『私たち3年生の夏は、これにて終了です。』
「っ」
『ですが、忘れないで。貴方は、少し私たちから離れるだけで、私たちは同じ道を歩みます。今日の負けは、明日の勝利です。あきらめてしまえば、全てがそこで終ります。
赤也部長。来年の立海は君が引っ張って行くんです。来年、その涙は、嬉し涙に変えてください。』
あぁ、やっぱり、オレは秘歌理先輩が大好きで、この先輩の笑顔にしたいんだって。
元仲間の考え
(だから、オレは知らなかったんだ。)
「先輩、オレは。・・・貴方のことが大好きでした。」
今は居ない貴方に教わった。離れていても寂しくない方法。
嫌な予感がして、空を見上げた
いつもは近く感じる安心できるその空が、ひどく、遠く見えた。
*