まだ私たちが幸せだったころの話


中学3年の最後の全国大会
3連覇という大きな望みと私たちの3年間の歴史を記録するその大会はむなしくも準優勝と言う形で終わってしまった


それからは我々は必死だった。

最後には、全員でおそろいのお守りを買い「3年後。このメンバーで、今度こそ全国3連覇をしよう!」と部長である幸村精市君の声に、言葉に、全員で誓った。



それから一年。



「優勝立海大付属高校」



そのアナウンスとともに代表で受け取ったのは我らが神の子・精市君。
現在のレギュラーは3年生一人・二年生1人・一年生・5人。

その一年生というのが3強である精市君・蓮二君・弦一郎君。

そして私と雅治君。


この結果は3年前とは異なった結果になったけれど…

それでも私たちは再び「常勝」というその絆を結び始めたのだ










表彰式が終り、準レギュラーである彼らの元に私たちはいた。
理由…ですか?井上さんの姿を雅治君が見つけたもので逃げてきたんです。我々はあのような取材は苦手ですからね。



「にしても、中学ん時は幸村達だけだったのに俺たちは置いてきぼりかよぃ」



コーラを飲みながらベンチに座ったブン太君が言う。
それに、ジャッカル君も頷いた



『私と雅治君は運が良かったんですよ。ダブルスの先輩がU−17に推薦されなければ入れなかった枠でしたしね』

「そういう秘歌理も推薦されてたがのぉ」

『我々は全員そうでしょう、ここにいない赤也君以外。』

「そうじゃの、まっ来年ブンちゃんたちはこれるじゃろ」



いつもどうりの会話。
時計を確認すればそろそろ取材が終わる来るだろうと思われる時間帯。

精市君たち、ちゃんと撒けていればいいんですがね。
なんて考えながら、それは自分たちのゆっくりすごしている時間を取材につぶされるのが少々いやだというわがままな理由でもあります。

紳士としての私はコート内だけですからね。
コート外は淑女です。

だから少しわがままでもいいですよね?


なんて考えながらベンチに座っている雅治君に『さて、』と声をかければ彼は私を優しく見上げた。




『一昨日の約束を覚えていらっしゃいますか?』

「覚え取るぜよ。新しく出来た植物園に行きたいんじゃろ?」



鎌をかけるように彼にそういえば雅治君はベンチから立ち上がって私の肩を抱き、そういう。
その行動にパァンッと派手にガム風船が割れた。

唖然としてるブン太君、に若干顔を赤くしてるのはジャッカル君で




「おまっそれ」

『勘違いしないでください。私たちは少々賭け事をしていたんですよ。』

「おん、先輩達には失礼かもしれんがの」

『S3の泉先輩は6-2 D1は我々で6-0 S2は山田先輩で6-5。これで我々の勝利は決まっていましたが、その後に山田先輩がいうであろうセリフの近いほうの約束をひとつかなえるんです。』




何を思ったのかびしぃっと効果音のつきそうな勢いで私を指差したブン太君に微笑みつつ、わけと理由を話し、笑う。



『私が言ったのは、新しくできた植物園に付き合って欲しい。』

「俺がいったんは、秘歌理とどこかに出かけたい。だったんじゃ」


「どっちもおんなじだろぃ!!!」

『「そうですか?/そうじゃろか?」』

「だー!!いきぴったりじゃねぇか!」



カシャ



「『!』」



ブン太君が悲鳴のようなその叫びをあげた瞬間に鳴ったシャッター音。
ビクッとお互いに肩を揺らしてその方向を見れば「井上さん、今の写真現像してくださいね」とにっこりと笑いながらトロフィーを持ち言う精市君とその後ろに蓮二君と弦一郎君。


それから記者の井上さんが満面の笑みでカメラを構えてそこに立っていた。




「あぁ、いいよ。彼らを紹介してくれたらね」

「お安い御用ですよ。ね?仁王、秘歌理?」




にっこりと
ぎゅぅっとジャージの袖がつかまれるが、私も少々残念です




「ひかり・・」

『雅治君…どうやら観念するしかないようですね…』



若干震えているのはこの際スルーしましょう
つかまれていない方の手で眼鏡のブリッジを押し上げて、小さく息をはいた












「いやー、ありがとう、幸村君。」

「いえ、うちの部員ですからね。」



それから質問攻めにあい(途中でジャッカル君達は帰ってしまいましたよ)ジュースを飲みながらため息をつく。



「本当は春のミクスドの時に取材したかったんだけどね、表彰式終わった後すぐ探したんだけどどこにもいなかったんだ」

「あの時は俺もびっくりしたんですよ。なにせ仁王は俺に、秘歌理は柳に変装して帰ってきたんですから。」

「そうか・・・だから…っていうことは仁王君、あの時僕に嘘をついたんだね」

「・・・プピーン・・・」

『意味分かりませんよ、雅治君』



ジュースは井上さんに買っていただいたもの。
いただいたものはありがたくいただきます。

けれど私の横で相変わらず意味のわからない言葉を使う彼には苦笑いしてしまうが仕方のないことだろう。




*-*-*-*-*-*




「それにしても驚いたよ、いきなり「行きますよ、雅治君」なんていってカシャンッてラケット当てたらシンクロしちゃうんだもん」

「あぁ、いいデータが取れたぞ。」



井上さんと別れて帰り道、精市君の提案でいつものファミレス。
そこでオレンジジュースを飲みながら精市君が言った。
その言葉に横でデータを取りながら蓮二君も続ける



『私たちはそんなに意識はしていないんですが出来るようになったんですよ。』

「そうじゃな、中3の後半には出来とったからのぅ」

「ほぅ・・・ではU-17の合宿のときは発動しなかった・・・というわけだな」



さらさらと、再び彼はノートに書き写していく
彼もそろそろ私たちのデータをとることをやめればいいのに、なんておもうけれどそれを彼に言ったらいつもどうり開眼されそうなので今は黙っておきます。

今日は祝福気分でいたい。



「でも、俺たちに言ってくれてもいいじゃんか」

「本当は春のミクスドの大会のとき言おうと思ったんじゃが、相手が弱すぎたんじゃよ」

『えぇ、最終は弦一郎君と女子テニの方でしたが、完全に弦一郎君の足手まといになっていて無残でした。』

「イリュージョンを解く必要もなかったゼヨ」



ズッと空っぽになったコップが音をたてる。
私ではなく隣の精市君で、肩がプルプル震えていて、



「っあははっ、そうだよねっ」

「精市、周りを見ろ」

「ふふっごめっぷっあはははははっ」



・・・どうやら止まることはなさそうですね。
なんて思いつつクスクスと私は笑った。

でもいささか・・・




『弦一郎君に失礼ですよ、精市君。』




笑いすぎだと思いそう注意をして一口珈琲を飲む。



「もうすぐ冬のミクスドじゃけ、また一緒に組もうな」

『えぇ、』





数日後、

 月間プロテニスの表紙に私と雅治君のツーショット写真が載せられていて

 精市君がニコニコしながら「これ、二人の分ね」と写真を渡してきた


・・・取り合えず早く次の月になってください。
     

と、そう思ったのは全く持って仕方のないことでしょう。




これは、まだ私たちが幸せだったころの話。





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