同義

ND2000 
ローレライの力を継ぐもの、キムラスカに誕生す 
其は王族に連なる赤い髪の男児なり 
名を聖なる焔の光と称す 
彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くであろう


ND2002 
栄光を掴む者、自らの生まれた島を滅ぼす 
名をホドと称す 
この後季節が一巡りするまで 
キムラスカとマルクトの間に戦乱が続くであろう


ND2018 
ローレライの力を継ぐ若者 
人々を引き連れ鉱山の街へと向かう 
そこで若者は力を災いとし 
キムラスカの武器となって街とともに消滅す 
しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ 
マルクトは領土を失うだろう 
結果キムラスカ・ランバルディアは栄え 
それが未曾有の繁栄の第一歩となる




つらつらと書き連ねられたその文章に目を通しながら、彼女ーサラはため息をつく。メガネの奥で細められるアメジストの瞳は呆れを含んでいた。

ローレライ教団の一室。
もう何度も読み返したその文章は変わることはない。それが導かれている未来なのであると30年以上生きていて彼女のなかにはいたいほど染みていた。ーもっとも、その予言(スコア)を崇拝するこの教団の中で、その存在をどうでもよいと思ってるのは彼女以外にもいるだろうがー


「私も、年をとりましたね。」


くいっとメガネのブリッジを押し上げて資料をファイルにはさむ。
もうすぐ、予言にかかれたND2018。なにかが始まる予感がいやでもわかっていたし、それに荷担している自覚もあった。
それでも、自分がやりたいこと、やりとげなければいけないことのために、立ち止まることも諦めることもできなかった。

それでいいのだと、言い聞かせて諦めていたのはいつからだろうか。

あの赤い瞳をいつから見ていないのか。
ーー彼は己のことなど、でき損ないの興味のないものだと知っているけれど。


「またここにいたの。」
『シンク。ノックをしなさいといつもいってるでしょう』
「…したけど?」


かけられる声に、返す言葉。
怒りは含んでいないが、相手側は呆れを含んでいる。『あら、』と首をかしげれば片目を隠すように伸ばされた銀色の髪がさらりと流れる。


「熱中するのはいいけど、ヴァンが呼んでるよ。」
『総長が…あぁ、きっとまためんどくさい案件ですね。行きたくない。』
「お仕事、だろう?」
『シンクは意地悪になりましたね。』


かつかつと鳥の面をつけた少年ーシンクーがサラのそばまで歩き、彼女の座っている「車椅子」のハンドル部分に手をかけて動かしはじめる。
持っていたファイルを膝において動き始めたことによる風の流れに下をむいた彼女に「僕はアンタに似ただけだよ。「母上」」と言われれば苦笑いしか出てこなかった。




ーーー不義は同義に殉じてる


(何かが動き始める。その予感を知っていた。)



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(お題#指切り様)
(物語が崩壊する七つの禁忌)
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