静かに夜の庭を眺めている彼女の目は憂いに満ちていた、
この世の残虐さにか、それともそれ以外にか…



『なんで、争いでしか治められねぇんだろうな、小十郎。』



その傍らには腹心片倉小十郎の姿もあり、政宗のその言葉に、視線を畳に移す。
「北の竜」とその名を持ち他国から恐れられながらも、彼女は人を殺すことをできればしたくないといっていた。


長篠の戦いで東国に大打撃を与えた織田信長。
その後の話を、政宗は忍である猿飛佐助から聞いていた。

彼女の隣にいた真田幸村は怒りに震えていたが、逆に政宗の心は静かに悲しみを帯びていたのだ。

力でしか統一できない愚かさを。
そして裏切られることの恐れを。



『小十郎。成実たちに文を送れ』

「はっ」



彼女もまたそれを恐れてはいるけれど…
けれど、己はそんな過ちはしないと。



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