『三成、儂はお前が大好きだ!』

「戯言を」

『むぅ、本当だぞ!!』



目の前に居る。
この女は昔私にそう言った。

私も、同じ気持ちだった。


秀吉様と半兵衛様と、私と家康と・・・
ともに仕え、そして護ってきた。


なのに・・・



家康は秀康様を殺し・・忘却せんとする
ともに、歩み、世界を築こうとしていたはずなのに・・・


何故だ、



何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっっっ!!




『三成!!!』



泣きそうな顔をして、私を見る。
泣きたいのはこっちの方だ。

私から全てを奪った



私を、裏切った・・・!!!



『っ頼む、話を聞いてくれ、儂の、私の話をっ!!』

「貴様の話など、聞く意味があるか!!
 お前の話など、意味が無いだろう!!」

『三成!!!』


私に叫び悲鳴のように名を呼ぶ

千代の頃の顔に酷く戸惑う。
あぁ、そうか・・・



フラフラと近寄ってくる家康を、殴り飛ばす。
小さく悲鳴を上げて地面を転がった家康。


『ぅぐ・・・』


その、痛々しい姿に・・・思わず、マユを寄せた。
家康からは見えていないだろう、

うめきながら、フラフラと立ち上がる。

あぁ、だが・・・私は・・・


『っ三成・・・ぃ・・・』

「貴様を殺してやろう、さっさと立て」


私の言葉に、家康の頬に涙が伝う。
そして、ぎゅぅっと拳を握った。


『儂は・・・死ぬわけには行かないんだ・・・っ
 儂を慕ってくれている・・儂を頼ってくれている多くの民が居る。

 だから・・っ私は勝つしかないんだっ!!!』


立ち上がり、そのまま、ふらりっと私に対して歩みだす。



『っアァアアアアアア!!!!!』


絶叫。
振り上げられるこぶし、
大粒の涙を零し、私へと向かってくる。
あぁ、そうか・・・


「(貴様になら・・・)」


殺されても良い。


*-*-*-*-*-*-*-*-*

『三成、み、つ、三成ぃ・・っ すま、ない、ごめ・・っごめん、なぁ・・っ』


体中が痛い。
私は、死ぬのか・・・

傷だらけだが、私よりも家康の方が血に濡れている
だが・・・望んだことだ・・・できる事ならば・・・と・・・


「いえ・・やす・・」

『っしゃべるな、三成
 今、今医者が来るから、だから』

「千代。」

『っ!!』


出来ることならば・・・千代の手で殺されたいと・・・
ゆるりっと手を伸ばせば手繰り寄せるように、千代は私の手を両手で包み、おのれの 頬に添えた。


「一生、にく、んでやる・・・」

『っそれで、いい、いいから・・ っ』

「お前が・・わた・・し・・を・・・」

『みつ・・なり・・・


 いやだ、三成


  みつなりぃいいいいい!!!』



あぁ、私の最期の言葉は・・・きこえただろうか



*-*闇の証言*-*

 1600年 関ヶ原の地にて散った凶王・石田三成

     彼の生涯の最期は・・愛しきものの手で・・・



 (私も・・絆されたものだ・・・)



執筆日 20130523



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