IFストーリー/時間軸は「崩れゆく日常」の時です。
ただ、真田家には里帰りしていません。
彼女の名まえは?
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『三成殿、いつも鍛錬にお付き合いさせてしまってすいませぬ』
「あんな女の相手をさせられるよりましだ。」
ぐいっと汗をぬぐうのは紅の姫君、
側には、空から落ちてきたという天女を確認すべく豊臣から派遣された石田三成の姿がある。
だが、彼は天女になびかず…彼女のそばにいるわけだが…
『失礼ですが、少々驚きました。
政宗殿も、佐助も…お館様も…皆…まだ目を覚ましませぬゆえ…』
「…いっそ豊臣に来てしまえばいいだろう。
秀吉様はお前の敬愛するお館様より壮大なおかただ。」
『ですが、某は武田を愛しておるのです。
たとえ、天女殿に汚されようと…某は…』
ヘラリと笑って、幸は己の武器である朱色の槍をひとまとめにした。
それに、ゆるりと目を細めた三成は静かに「幸」と名を呼ぶがフルフルと首を振る。
それは否定の意。
『着替えてまいります、
明日か…明後日…
某は真田へと戻らねばなりませぬから…
そろそろおなごの真似事でもしなければ真田の屋敷に戻りしのちの嫁ぎ先がなくなってしまいまする。』
「・・・」
『では…』
それからそういって一礼するとするりと先ほどまでの鍛錬とは似ても似つかないほど丁寧な足取りで歩き始めた。
ただ一人残された三成は静かにその背を見、ふぅっと一つ息を吐く。
「石田様。」
「…」
「真田十勇士がひとり、霧隠才蔵にございます、」
そんな彼の前に降り立ったのは彼女の忍、
頭を下げそして己が名前を言うとゆるりと顔を上げた
「石田様、どうか幸様をお救いください。
今、幸様を表立って守れるものは誰一人としていないのです…。
我々忍は陰ながらにお守りすることしかできません」
「言われずとも、半兵衛様より真田を連れてくるように言われている。」
「…それは、ようございました、これにて、ごめん」
しゅっとその三成の言葉を聞いてわずかに表情を緩めた彼はきえた。
「…馬鹿ものが」
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紅色の着物をまとい、そしてぼーっと縁側から庭を眺める。
もうすぐ日が暮れる。
あの天女が来て…早1月。
今まであまりやらなかった執務がたまりにたまり…
真田へ戻る前にすべてを終わらせようとしていたらもうひと月もたってしまった。
着流しなど一人では着れなかったが佐助の手が借りられなくなり、もう着物まで切れるようになってしまった。
それはいいのか悪いのか、
己に笑ってしまうが、明日には真田に帰るといわねばならぬ…
故に…気乗りはしないがお館様たちがいるであろう宴の席へと行こうと立ち上がれば「真田…?」と不思議そうな声がかけられて、振り返る。
振り返った先にいたのは三成殿で、
「…姫のようだな。」
『お戯れを、私はただのなりそこないでございます。』
「そんなことは関係ない、 あそこへ行くんだろう?」
『あい。』
「私もついていこう、」
そういえばこの姿で会うのは初めてだと思いながらその言葉を聞き微笑む。
くすくすと笑いながら歩き出せば彼は私の数歩前を歩いて、私も私でその背を追っていたのだけれど
目的の場所につけば三成殿は足を止めた、
そして私を見た彼にほほえみ、すっと障子の前に膝を折り頭を下げた
『お館様、幸にございます。』
「入ってよいぞ、」
『あい、失礼いたしまする。』
それから、許しをへて障子を開きまた一つ頭を下げる。
宴の間がざわりとしたがするりと頭を上げて前を見据える、
しゃらりとかんざしが音をたてた
『明日の朝、真田の地へと立とうと思いまする、ゆえにご挨拶に参りました。』
にこり、微笑みするりと立ち上がる
これがすべて作ったものとこの方たちは思わないだろう、
それでも、いい。
それでもいいから…
天女殿と目が合った。
まるで、化け物を見ているかのように某を写し端麗なその表情を崩したから、ゆるりと笑みをむけた。
そうすれば、その表情をさらにゆがめた。
『では、すみませぬが、これにて某は失礼させていただきまする。』
執筆日 20130828