想イ輪廻 | ナノ

08


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「弥月。」

『! 秀吉様、どうされましたか?』



半兵衛様との二人だけの軍議を終えて、片付けの為に残っていれば現れたのは秀吉様だった。
周りを確認しては居ないから、多分、半兵衛様に用事・・・ということではないのだろうか・・・



「今はお前だけか。」

『はい、そうですが・・・あぁ、呼んできましょうか?』



否、半兵衛様は確かに秀吉様のそばになるべくいるようにはしているだろう。
けれど、それでも、病気の進行は止められないのだ・・・

今だって、咳き込み始めた彼を私が無理に彼の部屋に突っ込んできた。

もちろん、怒られたが、彼の命のためだから・・・



「いや、良い」

『左様で。』

「最近、半兵衛が無理をしているようでな、すまぬ。」

『無理はしないように声はかけているのですが・・・』



半兵衛様は秀吉様と取る天下に盲目ですから。
と苦笑いして答えてしまえば、秀吉様は大きな手の平を私の頭に置いた。

本当に、大きな手。

なんでも、つかめそうなほど・・・多くのものを、つかめそうなほど・・・

ほら、大仏様の手にはより多くの人を救いあげるために零さないために、水かきがあるように、秀吉様の手は、大切なものを護る為に、大きくあるのだと思う。


けれど、この手でこの人は、大切な人を殺しているのだ。



「三成や家康も世話になっているな。」

『いえ、むしろ足を引っ張っているのは私のほうです。』

「だが、三成は大分丸くなった。」

『そういえば最初の頃は私殺気当てられまくってましたものね・・・』



けれど、今は違う。

戦線に出れば、確かに弱きものをすべて捨てて、そして多くのものを壊すだろう。
だけど、裏を返せば仲間を大切にしている。

でなきゃ、私に声なんてかけないだろう。



「我が天下を収めたら、半兵衛の治療を頼みたい。」

『え・・・』

「我が気がついていないと思ったか。
 あいつは、我の居ないところで苦しんでいることを、」



秀吉様は、私の片付けている途中のそれらに視線を向けた。
それに、私も視線を向ければ、わずかに机に散っている血痕。

あぁ、本当は気がついていたのか。


もう一度秀吉様を見上げれば、難しそうな顔をしていた。



「半兵衛は、何故、我の言うことを聞かぬ。」

『・・・』

「苦しんで何になるという、」

『それは、自分の覚悟にございましょう。』

「覚悟だと?」



私の考えだ。
本当に、私の。

キリスト教徒でも何でも無いけれど、私は神なんて信じたくないし、大嫌いだけれど

視線が交わる。


背の高い秀吉様をずっと見ているのは大変だけれど、でも・・・



『神は、とても残酷です。
 だから、半兵衛様は、今は神の加護なしに、己の覚悟でこの息苦しい世界に根付いています。』

「・・・」

『けれど、神は乗り越えられるものしか与えません。
 だから大丈夫です。

 秀吉様、













 天下統一をして・・また、笑いましょう。』







神は、残酷だ。

もてあそぶように笛を吹いて、




ただただ、残酷に笑うのだ。





*-*悲歌慷慨*-*


猫は、小さな小鳥の羽を手折った。

ただ、鳥は飛べぬことを嘆くばかりだった


その悲しげな嘆きの歌を聞きながら、猫はただ-----






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悲しげに歌い、世を憤り嘆くこと

執筆日 20130311


 
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