06
(33/45)
「すまないな、邪魔をして。」
小十郎さんが去って、家康の第一声はそれだった。
笛を片手に家康を見れば、いつもの目じゃない。
何かを・・・決めた目。
『どうしたのさ、家康。』
「少し、聞きたいことがあってな、」
『聞きたい、事?』
疑問。
私から家康に質問することはあったけれど・・・
家康からは初めてで、首を傾げれば彼は気まずそうに顔をそらした。
「こんなことを…弥月に聞くのはどうかと思うが・・・
弥月は秀吉殿をどう思っているんだ?」
けれど言われた言葉につうっと嫌な汗が流れた
私は、大事な事を忘れていたんだ。
この世は戦国。
今の世は豊臣で・・・次は・・・徳川・・・
『家康・・・』
確か、本当の史実は豊臣秀吉の方が年下で、死因は病死。
でも、この世界の中は違う。
現実味も無い。
そんな力を使う人たちがいる
だから… 史実が本物とは限らなくて、
見つめられたまっすぐな目から視線をそらした。
『私は・・・いえない。
秀吉様は私に居場所を下さった一人で・・・大切な人。』
「なら・・弥月はこの世を… 今の世をどう思う?」
『今?』
小さく呟く
今の世・・・
私には・・・私には…
『…失われる大切なものが多すぎる世界。』
悲しすぎる世界。
涙を流す人が絶えない世界
だから今の日本があるけれど・・・
戦国(今)の世界は好きじゃない。
でも、そう・・・
そう思えるぐらい・・・
私はこの世界になじんでいたんだ。
*-*烏兎匆匆*-*
ならば、儂についてきてくれないか?
家康の言った言葉を
私は、ただ、聞くことしかできなかった
*-*-*-*-*-
月日の過ぎるのが早いさま。
執筆日 20130307
戻//進
表