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それを受け取って首をかしげた。
これがなんだというのだろうか。
小十郎さんを見た。
「竹中に言われていただろう、芸を身に付けろと。」
『・・・あぁ・・・それで・・・』
けれど言われて納得する。
そうだ、舞っぽいのをやれって言われたが、これでもいいだろう。
だけど生まれてこのかた、学校の音楽で使うリコーダーや鍵盤ハーモニカしか吹いたことが無いのに・・・横笛か・・・
横じゃなくて縦ならリコーダー感覚でいけそうだが・・・
「やったことあるか?」
『いえ、手に取るのも初めてです。』
けれど、そういわれて首を横に振る。
そうすれば彼は「こうだ」ともう一本笛を出して構えて見せた。
お手本・・・ということだろう。
それをまねして構えれば、吹くように指示される。
だが、しかし、ド素人な私がふけるわけがない。
「もっとやさしくだ。まっすぐ息を吐け」
次の助言。
頷いて言われたとおりにする。
『ぁ・・・』
掠れた、とても聞けたものでは無いけれど、小さく音がなった。
それにはっとして顔を上げれば小十郎さんが私の頭を撫でてくれる。
小さい頃に戻ったみたいだ。
「お前は本当、何でもできるな。」
『小十郎さんの言ったことをやったまでです。
教え方がうまいんですよ』
それから、今度はさっきよりも深く息を吸って吹き込む。
そうすれば今度はしっかりとした音が出た。
まだ単音しか奏でることはできないけれど、
でも、嬉しい。
それから少しして、近づいてくる足音に、笛を吹くのをやめた
見ればそこに居たのは家康で・・・
「片倉殿、
申し訳ないが弥月と少し話をさせてほしい。」
でも、いつもの家康とは違った
執筆日 20130307
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