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「大変だったな、弥月」
「・・・」
「本当にすまなかったな、お前の時間を取って。」
政宗の酒の強さには本当に驚いた。
「酌しろ、」なんていわれて、ずっとつかまっていたのだから。
まぁ、私以外にも回っている人が居るから大丈夫だと思うのだが・・・
私にも酒を飲めと言い出したときはさすがに焦った。
まぁそのときに小十郎さんが助けてくれたのだが・・・。
家康と石田様のところまでいけば、家康からは励まされ、石田様は無言。
連れてきてくれた小十郎さんからは謝罪を頂いた。
別に誰が悪いというわけは無い
『いえ、大丈夫です。
むしろ、今回は助けてくださってありがとうございました。』
それに私はちゃんとお礼を言わなくちゃいけないのだ。
あの時あのままだったら、私はきっとあそこで・・・
助けが来たから良かったものの、最悪の結末に今思えばぞっとする。
でも、まぁいいんだけどね
今、私はここで生きているから・・・。
「政宗様にも伝えておく。」
ぽんぽんっと頭を撫でた小十郎さんはそのまま戻っていったが、石田様の機嫌が悪いのは私の気のせいだろうか。
「弥月、儂にもお酌してくれるか?」
『うん、では失礼します。』
でも、家康に呼ばれてスッと横にいってお酌をする。
みんな良くこんなの飲めるよねー。なんて思うけど。
「弥月、さりげなく三成にもお酌してやってくれ。
あいつは自分から飲むような奴では無いからな。」
『石田様に?』
そんな私に小声で言った家康。
自分から飲まない・・ということはただ単に私と同じなのでは、と思うのだが・・・
断わるだろう、普通は。
なんて思ったけれど、スッと一度立ち上がり、石田様の横に座る。
『石田様もどうです?』
なるべくさりげなく隣に座り、首をかしげる。
シャラッと耳につけている飾りが音をたてた。
「・・・」
けれど差し出されたお猪口に、少し固まった。
視線はこちらに向いていないが、石田様は、私の問いかけに応じたということだ。
『失礼します。』
でも、早くしろ、と言われる前に私は彼のお猪口にお酒を注いだ
執筆日 20130306
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