人間とは時に、考えられないほどの能力を発揮する生き物だと思う。
実は、その人物からは検討もつかないほどの才能を持っていたり、趣味があまりにもデンジャラスでアバウトだったり。



「ふふ」
「……なんだよ」



ほら、目の前にいるこの可愛らしい少年は、顔を顰めているのに何故だか赤面だ。
睨んでいるつもりなんだろうけど、手に持っているメロンパンのカスが口の端についていたり。

本題とその話題の共通点が見出せないって?



「気持ち悪いから僕を見るなっ!」
「ふふふ」
「な、なな、何だよ…」



つまりは、あれだ。
その人物の才能を見つけることが俺の些細な楽しみなんだ。



「ねえのび太、そのメロンパン貰ってもいいかな?」
「駄目に決まってるだろ!」
「えー、何で?」
「何でって、そそ、その!所謂間接キスとなるわけで…、つまり…」
「ごめん、声が小さくて聞こえないな」



剛田の才能は何だった。確か彼の才能は周りをまとめる力。
それが少し乱暴でも皆怖気づいて逆らえないのは事実だ。
スネ夫の才能はあれだ、金銭的な問題で一般人がどうしても憧れてしまうものを持っている。
そしてそれで他人を魅了することだ。
静香は誰にでも優しく、誰からも信頼される才能の持ち主だ。彼女を憎んだり恨んだり人間など存在するだろうか。
まあ存在すると言えば存在するかもね。
尤も、この俺はそうだとも。
憎み恨む、というよりは羨んでいるというのが望ましい表記だ。



「そうだ、さっきから気になってることがあるんだけどね」



そう言ってから間をひとつ。
ぺろり、のび太の下唇を舐めた。ついでにキスの一つでもして上げればよかったかな。



「メロンパン、ついてる」



これでも間接キスがどうとかって言うのかな。



「き、気持ちわるーい…――!」



「あー!気持ち悪いいぃぃ…」赤い顔をしながらも嫌だ嫌だと首を振っている。
これは一種の現実逃避?
俺は首を傾げながらも、細く微笑んでみせた。


ああ、またおかしくなりそうだ。





ボクノサイノウ
(君の才能がなきゃ発揮されないのさ)









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またおかしくってことは、前なにかやったのですか







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