別にこの感情を認めたくない訳じゃない。ただ、それを証明するきっかけが欲しいだけ。



「スネ夫?」



教室で静かに呼ばれた名前にびくっと反応する。
この声、久々に聞いたなとか、そういえば最近話全然してないやとか、名前を呼ばれて気づくことが沢山あった。
何?と笑って答えるとジャイアンは本を読んでいた腕を不意に掴んだ。



「え、え?」



突然の事に驚いていると、ジャイアンはちょっと良いか?と真剣な顔で訊ねてきた。
うん……と小さく返事をすると、掴まれた腕を廊下の方へと引っ張られる。
俺は持っていた本を机に置くと、そのまま連れて行かれる方に歩いていく。

何を言ってくるのだろう。俺は一人緊張していると、ジャイアンが口を開いた。



「なあ、俺のことどう思ってる?」



なんて、訊いてどうするのかも分からない質問をされた。
俺はどう答えていいのかも分からず、目を逸らしたままだ。



「どう思ってるかなんて、訊いてどうするの。」



答えに困った結果、質問から逃げるような言葉を発する。やばい、直ぐにそう思った。
でもジャイアンはえーと……と困ったように唸る。



「いや、なんていうか……最近お前俺と目、合わさないし。」



そう言葉を選ぶように喋る。
意外と気にしてたのか。



「じゃあさ、ジャイアンこそ俺の事どう思ってる?」



質問を質問で返してしまった。
でも一番知りたかったことを今知れるのだから別に良いかなとか思ってみる。
ジャイアンはまた困ったように笑ってみせた。



「俺はスネ夫のこと、好きだけど。」
「え、それってどういう、」



どういう意味。そう聞こうとしたのに言葉が詰まって出てこなくなった。
するとジャイアンが真剣な顔になっていく。そして突然肩をがしっと掴まれた。
俺の背中が人気の無い廊下の壁にトン、と当たる音がする。



「好きだ。」



そんな声が聞えたと思うと、唇が何かに当たった。
離れたと思うと、ジャイアンは横を向いていて、ごめん。とだけ言うと教室の方へ歩いていく。
少しだけジャイアンの顔が赤かったように見えたのは、ただの俺の妄想だろうか。



「何だよ、それ。」



俺はよし掛かっていた壁からずるずると腰を下ろす。ぺたん、と床に腰がついた時には顔を手で覆っていた。そして途端に恥ずかしくなってきた俺は自分の膝に顔をうずめる。

人はファーストキスを奪われると、奪った相手を好きになるものなのだろうか。
きっと俺にとってそれは、気づけなかった何かに気づくきっかけだったのだろう。






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中途半端すみません







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