爆豪と招き猫


▼MHA招き猫シリーズより
「爆豪と招き猫」

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「おい」
「に“」
「テメェ人の顔見て逃げ出すとは良い度胸じゃねーかクソ猫」

ばったり。
普通科とヒーロー科はそれこそ会いに行かないと校舎内で中々会う事などないのだけど、偶然にも出会った爆豪に私の身体は自動的にぐるりと背中を向けた。のだがそれがいけなかったらしい。元来た道を歩こうとしたら首が急激に締まり、予期せぬ苦しさに口から女子にあるまじき声が漏れた。

「やぁ爆豪。用事がないなら首根っこ掴むのやめてよ」
「…用事、はある」
「あ、そうなの?なんだ。じゃあとりあえず逃げないから離してよ」

このままだと窒息死しそうだ。ギブアップの意味もこめて首根っこを掴む手をぽんぽんと叩くと案外あっさり手は離された。

後ろによれたシャツの襟を整え、振り返ると爆豪がばつの悪そうな顔で立っている。相変わらず眉間にしわが寄っているが、大人しい様子を見ると何か言いたい事でもあるのだろうか。すっと距離を詰めて顔をのぞいてみると、爆豪の瞳に自分の姿が一瞬映り込んだ。

「?!ばっ近ぇーよ!」
「さっきから近いとか逃げるなとか…矛盾?」
「距離感ってもんがあるんだろーが!」

ううん、爆豪のいう事は難しい。
首をかしげて見せれば理解できていない事はすぐに分かったらしい。チッと大袈裟にもほどがある舌打ちをして、ポケットから何かをこちらへ差し出してきた。

「勿体ないからテメェを誘ってやる」
「?何これ。もらっていいの?」
「…もらわねぇなら燃やす」
「待った待ったもらうもらう」

物騒な言葉に慌てて爆豪からそれを奪うと、思わず二度見をしてしまった。
それは公開前から私が見たいと熱く語っていた映画のチケットだった。しかも現在は人気過ぎて販売を中止しているオマケのグッズ付き券だ。後でも買えるからとすっかり油断して購入を逃していたのだが、まさかこんな所で運が回ってくるとは。

これはお礼を言わねばと爆豪を見ると、あきらかに目を合わせないように明後日の方向を見ていた。

「いいか、もらったからお前を誘っただけだからな」
「それでも嬉しいよ。私を選んでくれてありがとう。このオマケのグッズも欲しかったんだ〜」
「…そうかよ」
「そうなの。ねぇこれ今週末上映だよね。それじゃあ待ち合わせして一緒に見に行こ」
「!仕方ねぇな」
「わーい」

少し皺のよったチケットを大切に制服のポケットに入れ、もう一度お礼を言うと爆豪の用事はこれで終わったらしい。今週末に、と念押しをしてからいつものように大きな態度でヒーロー科のある方へと歩いて行った。

「あ、これってデートってやつか…」

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